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罰ゲームで告白してきた美少女ギャルと付き合うようになった件  作者: 夜依
美少女ギャルとのイベントラッシュは甘さマシマシな件
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第1話

 季節が変わったのは暦の上だけではないと言わんばかりに北風が運ぶ寒さは本格的なものになった。街は電飾で飾り付けられ、気が早い気もするがクリスマスムードを漂わせている。

 変わったのは何も季節だけではない。ついこの間短期バイトを終えた芽衣の後押しによって、俺は中学の頃の話にケリをつけることが出来た。それに気づいたのか、祐奈からは憑き物が落ちたみたいだよ、これで芽衣お義姉ちゃんとの仲もさらに進んじゃうね、とか言われたりもした。


 閑話休題。色めく街に繰り出すためには乗り越えなけらばいけないものというのが少なからず存在する。学生である俺たちの場合は期末試験である。今回は赤点一つで我らが担任の宮野先生とクリスマスイブとクリスマスを共に過ごすことになる。宮野先生ファンなら嬉しいのかもしれないが、することは補習だ。

 風の噂で聞いたところ、補習日がクリスマスイブとクリスマスなのは宮野先生たっての希望らしい。クリスマスに過ごす相手がいないのを仕事の所為にしたいのかもしれないが、勘弁していただきたい。


「雨音、ここはこの公式で解いていけばいいんだよな」

「ああ。そこの例題みたいな感じでな」


 ようやく返ってきた芽衣との放課後は、部活が休みになった篠崎に捕まって勉強の時間へとなってしまった。ちなみに芽衣は若宮さんとあーしさんたちとで、勉強会兼女子会をするらしい。若宮さん曰く、和也くんの相手が出来るのは雨音君だけだからとのこと。彼女なんだから、ちゃんと面倒を見てあげてほしい。勉強会をするときも篠崎の相手をしているのは殆ど俺だけとはいえだ。


「なあ雨音。どうして俺たちは勉強しているんだろうな」

「そりゃ将来のためだろ。1年とすれば受験とかあるし」

「でも俺にはスポーツ推薦があるんだが」

「じゃあもっと近い将来、期末試験のためだな。クリスマスを若宮さんと過ごすんだろ」

「はぁー、辛い」


 何度目かも分からないため息をつきながら練習問題を解き進める篠崎に、巻き込まれた俺の方が辛いんだけどな、と呟いては二人そろってため息をつく。


「そういえばクリスマスプレゼントは決めたか?」

「まあな」

「だよなー、なかなか決まらな……。決めたのかよ」

「悪いか?」

「いや、お前の事だからてっきり頭を悩ませてるかと」

「今回は超強力なサポーターがいるからな」


 まあ、そのサポーターとは唯織ちゃんなのだが。おかげでプレゼントの種類はあっという間に決まった。

 アクセサリーは好みが分かれるから好きなデザインを自分で選んだ方がいいんじゃないかとか、ちょっと重いんじゃないかと余計な思考ばかりが働いてしまったが、雨音さんが選んだのなら大丈夫です、と背中を押されてしまった。あと、お姉ちゃんもお母さんの離婚の事もあって重い感じなのでいいんじゃないですか、とのこと。


「両家公認の仲だからか、畜生うらやましい」

「もしかしてだが、決まってないのか?」

「ああ。本当は今すぐにでもプレゼント探しに行きたいくらいだ」

「それで当日に会えなくなったら意味ないんだから、試験までは勉強に専念してくれ」

「くっ、先生にも恋人がいればっ」


 中間試験に比べれば科目数が増えるとはいえ、あくまで赤点前提の篠崎にため息をつけば、その後ろに恐ろしい目をした宮野先生の姿が見える。

 これはもう試験の結果とか関係なく助からないな。なんやかんやあったが、俺はお前と知り合えてよかったぜ篠崎。俺は長生きするつもりだから次に会うのは何十年後かだろうけど、その時はよろしくな。


「余計なお世話だ」

「げっ、先生」


 篠崎の声と共に名簿が振り下ろされる。そこに慈悲なんてものはない。宮野先生の前で年齢と恋人の話はしたらいけないと何度叩かれたら学習するのか。


「まったく君たちは……。まだ残って勉強していることに感心した私が莫迦みたいじゃないか」

「いや、一応勉強してましたから」

「そうか、じゃあ結果を楽しみにしておくよ。私とてクリスマスまで仕事はしたくないからな」

「先生が私怨で補習の日を決めたんじゃないんですか?」


 あっという間に復活した篠崎がまた余計なことを口走る。また叩かれたいのかよ。もしかして、叩かれ過ぎて開いちゃいけない扉を開いちゃったの?

 そんなことを考えながら、篠崎が名簿をお見舞いされるのを見ようとしてみるが、無慈悲な一撃が再び篠崎の頭に吸い込まれることはなかった。代わりに、違うわ、莫迦者と軽めのデコピンが炸裂したが。


「私は若手だからな、こういう人気の無い仕事を上から振られるんだよ。若手だから。せっかくだしパーティーにでも参加しようと思ったんだがな」


 若手を強調し過ぎだろ。早くその婚活パーティーで誰か貰ってあげて。ちょっとアレだけど悪い人じゃないから。そんなことを考えていると、若宮先生の鋭い視線が俺を捉える。怖いよ、テレパシーでも持ってるの?


「君は分かりやすいからな。おっと、こんな話をしに来たんじゃなかった。そろそろ6時だ。勉強や雑談もいいが、あんまり遅くならないうちに帰りたまえ」


 もうそんな時間なのかと外を見れば、夜のとばりがおりている。そんなことにも気づいていなかった辺り、思いのほか集中していたらしい。


「そうだ、雨音。解決したみたいで良かったな」


 荷物をまとめ教室を出ようとしたところで宮野先生からかけられた言葉に、え? と間の抜けたような返事が出た。


「君はいつも何かに憑かれているようだったからな、見ていて不安だったんだよ」

「はあ」

「柄にも無くて驚いたとでも言いたげだな」

「ええ、まあ」

「私は教師だからな。また何かあったら相談してくれ。あっ、恋愛相談は勘弁だぞ」


 先生は年不相応なウインクと共に俺の背中を押して去っていった。こうやって、偶にいい先生をするからか、俺はこの先生を嫌いになれそうにはない。

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