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罰ゲームで告白してきた美少女ギャルと付き合うようになった件  作者: 夜依
美少女ギャルと遠回りの末付き合うことになった件
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第33話

予約投稿の設定を間違えており、更新がされていませんでした。すみません……。

 電車に揺られること20分。連れられて来られたのは有名ホテルの中にあるカフェ。テレビで何度となく特集を組まれ、それを見るたびに祐奈が行きたいとおねだりをしてきた場所である。祐奈のおねだりは極力聞きたいのだが、貧乏学生の財布はギリギリ一人分を捻出できるかどうかといったところで、断ってきた未開の地である。


 席について早々、母さんは俺の小遣いと似たようなティーセットを4人分注文した。他にも食べたいものがあったら言っていいからね、なんて言って甘やかす気満々である。いや、別にいいんだけども。


「さて、どこから聞こうかしら」

「え、えっとメールでも話した通りなんですけど、壮太君と付き合ってます」

「ふふ、おめでとう。莫迦な息子だけど悪い子じゃないからよろしくね。困ったことがあったら相談にも乗るわよ」

「いえいえ、こちらこそ至らない点の方が多いですし、いつも壮太君には助けられてます」


 緊張感全開の芽衣と楽しそうながらも様子を探っている感じの母さんの会話はどこかぎこちない。そして同じ机に座り気まずさの余波を受けている兄妹が一組。言うまでもなく俺と祐奈のことである。一応俺も当事者の一人なのだが、あの中に割って入っていく勇気は持ち合わせていない。


 そんな空気をちょうどよく壊してくれたのはここの店員さんだった。お待たせいたしました、の声とともにケーキスタンドと紅茶をテーブルの上に並べていく。

 隣で繰り広げられていたぎこちない会話は打ち切られ、それぞれの視線はケーキスタンドを彩るスイーツの数々へと向けられた。一口大のショートケーキにチョコケーキ、マカロンやクッキーは女性陣の心を掴んで離さないらしい。


「いただきます」


 店員が去ったところで見るだけでは我慢できなくなった祐奈が手を合わせて、チョコケーキに手を伸ばした。それに釣られるように俺らもケーキスタンドに手を伸ばす。

 最初に口にしたショートケーキは甘さ控えめの柔らかいスポンジと、軽い口当たりのクリームが上に乗る大きな苺の美味しさをより引き出している。これまで食べてきたものを貶めたいわけではないのだが、一段階どころではない味の違いに驚かされる。それは俺だけでは無いようで、先程まで堅苦しさに揉まれていた二人も顔をほころばせている。


「すごい、美味しい……」

「それなら良かったわ。にしても、本当に美味しいわね」

「うん。私は毎日でも食べられるよ」

「それは自分で稼げるようになってからにして頂戴」


 祐奈が割って入ったことで机の向こうでは、母娘の久しぶりのやり取りが繰り広げられる。隣の芽衣はその様子を微笑ましく眺めている。


「仲いいんだね」

「まあ、あの二人はいっつもあんな感じだ。たまにしか会わないからってのもあるだろうけど。っていうか、仲がいいのは芽衣の家もだろ」

「それはそうだけど」

「まあ、母さんは芽衣のこと気に入ってるみたいだし、緊張が和らげば仲良くできるんじゃないか。俺だって芽衣の家族と打ち解けるまで時間かかったし」


 芽衣のお母さんはいきなり距離詰めてくるし、かと思えば芽衣の恩人だなんて言われて食卓に招かれるし、とにかく緊張でやばかった。お義父さんとか初めて会ったときは、ラスボスに挑む前の勇者くらい緊張してたと思うよ。いや、勇者の緊張がどんなもんなのかは知らないけど。


「そうなの?」

「そりゃもちろん。まあ、下の子達はすぐ懐いてくれたからそこまででもないけど」

「そういえばそうだったね。朱莉は最初からべったりだった」


 まだ一年も経っていない出来事だというのに、もうすっかり昔のように感じられるのは、芽衣との時間が今までの人生の中でも濃厚なものだからだろう。


「あー、お兄ちゃんがまたイチャついてる」

「いや、そんなこと無いから」

「いつもこんな感じなのかしら」

「ちょっと、聞いてる?」


 俺の言葉に返答はなく、そういえば修学旅行は楽しかった? なんて話からガールズトークが始まった。母さんをガールズに入れて良いのかはわからんが、下手なことを言って俺の分の支払いを渋られても困る。すぐ隣の話の盛り上がりを聞き流しつつ紅茶をちびちびと飲む。身内が集まってるとはいえ、男子一人じゃ肩身が狭いのは変わらないのだ。


 ついこの間の話から始まり、果ては俺の告白まで赤裸々に語ってしまう芽衣とそれにキャーキャー言う我が家の女性陣。そこに先程のぎこちない雰囲気はない。

 人の惚気を聞くのもなかなかだが、自分の惚気を聞くのはそれ以上にしんどい。誤魔化すように手を伸ばしていたので、自然とスイーツを食べる速度と紅茶を飲む速度は上がっていき、手持ち無沙汰になるまでに長い時間は要さなかった。


「あら、もうこんな時間?」

「楽しいとあっという間ですね」


 紅茶を飲むフリにも飽きてきて、もう一杯頼んでしまおうかなんて思ったところでそんな会話が聞こえてきた。その言葉に時間を確認してみれば、短針は6へと向かってまもなく半分といったところ。


「もう少しお話ししたいし、けれど時間は大丈夫?」

「はい、遅くなるとは伝えてるので」

「じゃあ夕飯もどこかで済ましちゃいましょ。続きは移動してから壮太も交えてね。もちろん帰りは壮太に送らせるわ」

「いや、母さんに言われずとも送るから」


 それならいいのよ、と言って母さんは伝票を片手に立ち上がった。このまま延長戦に突入するらしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] こちらでの更新ありがとうございます。 こちらはブクマ設定の関係で読み返しの時に楽なので更新していただけて本当に助かりましたー♪
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