05
ギルドは酒場と併設しているようで、顔が赤い人や呂律が回っていない人、周囲に演説している人など日中から騒がしかった。
「__昨日ほんとに見たんだよ!一人で草原の方で戦ってるやつをさあ!」
「馬鹿なことを言うなって。その見たって時もどうせ酔ってたんだろ?」
「がっはっはっは、違いねえ。お前さんはいっつもそうだもんなあ!」
「だからほんとだってば!」
演説していた人の周りからそんな声が聞こえてくる。
相当酔っているようで声がとても大きく、徐々に周りから注目を集め出す。
「なんで信じてくれないのさあ!」
「じゃあ戦ってたのはどんな風貌のやつなんだよ?男か?女か?種族はどうだったんだ?」
「街から見てたからそこまでは分からないけど……」
段々と言葉が尻すぼみになっていき、俯いてしまった。
「なんにもわかんねえじゃねえか!それで信じろはさすがに無理があるぜ!」
違いねえ、と周りも賛同し笑いだした。
「彼の話が本当ならすごいですよね。あの草原で夜戦っていたということは魂だけの存在を倒せるって事ですし」
ギルドの入り口で聞いていたのが悪かったのだろう。
学者風の優しげな男性が声を掛けてきた。
「魂だけの存在?」
「ええ、ラームの周辺では夜になると亡霊や怨霊の類が大量に発生するらしく、並の冒険者や生産者では太刀打ちできないんですよ。」
「……街の中には入ってこないんですか?霊ってことはすり抜ける事もできるんでしょ?」
「この街は他の街と違って外壁が低いのは知ってると思いますが、その全てが聖石で出来ているんですよ。そのおかげで邪悪なものは絶対に入ってこれません。もちろん門も聖石製ですよ」
「上空からは入ってこないんですか?霊なんだからこう、宙に浮いたりして」
「霊はたしかに浮いていますが一定距離おそらく1〜2mほどしか浮き上がれないんです。上空から入るとなると上位種、もしくは投下でもされない限り入ってきませんよ。長年研究を重ねてきた僕が言うので安心してください」
学者っぽい風貌なだけかと思っていたが、本物の学者だったとは。
「いつまでも立ち話はなんですし酒場で話しませんか?」
「お気持ちは嬉しいのですが手持ちがほとんど無いのでまた今度よろしくお願いします」
「そういうことなら仕方ないか。僕は時々来るから次会った時にしようか」
じゃあねー、と学者の男性は出ていった。
後ろ姿が見えなくなると自身もギルドの受付へと向かっていった。