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「……よろしく頼む」


なんのためにラームの街を焼き尽くすのかもう一度考え直した結果が出た。


ギルド長からであれば、即答でノーと答えていたことは明白だ。


なぜならそこまでの義理をこの街には感じていないからだ。


一度喧嘩で負けた程度であお以外は全員手のひらを返して自身を笑った。


その元締であるギルド長に義理など感じることもなければ、恩も感じない。


だが、あおの願いであれば別だ。


どん底に叩き落とされた時、唯一自身に救いの手差し伸べてくれたあおには返しきれないほどの恩を感じている。


また、初めて見た時からあおを手に入れたいとも考えている。


しかし、これまでいいところを見せられないままここまでやってきてしまった。


なら、ここで魅せなきゃ男じゃないと一念発起した。


「任された。ここから空に飛ばしていいの?」


「ああ、かなりの高度が必要になるが大丈夫なのか?」


「もちろん。飛ぶ心の準備が出来たら言って」


あおは身体をほぐすように屈伸やら伸びやらをしている。


やはり持ち前の力で投げるのか、と考えてしまい、首を振るとこれから為すべきことに集中する。


大きく深呼吸をすると、あおにやってくれと頼んだ。


「それじゃあ行くよ」


両手をこちらに向けて詠唱をしだした。



あれ?その両手でぶん投げるんじゃないの!?


さっきまでの準備運動は何のためにしてたの?



上空に放り出される直前にあおの行動で心がかき乱される。


しかし、魔法の詠唱は止まらず、ついに飛び立つ時がやってきた。




「__ウィンド」


その一言を聞き取った時、自身の足元に強烈な突風が吹き、勢いよく身体が上昇していく。


その数秒後、急な浮遊感に苛まれ、このまま地面に叩きつけられて死ぬ光景が脳裏に浮かぶが、目を強く瞑り気持ちを切り替える。


打ち上げられた高度からはラームの街全体が見渡せる。


一番最初にこの街で受けた鍛冶屋での火起こしの依頼を思い出し、あの時に生み出した火力を再現したいと強く念じる。


そして__




「……エクリプス·クリムゾン·ファイア」




その一言によってラームの街全体を囲うように、大きな火柱が立ち上る。


だが、それは遠目から見てもフォルテや噴水に向けて放ったものとは違い、所々に黒や白が混ざり、火の質自体が泥のようになっていた。


まさにマグマの再現だ。


それは地面から上空に吹き上げられているためさながら噴火のような迫力がある。


その光景を視界に収めながら、これから自身に襲いかかる強力な重力によってぺしゃんこになる未来が頭をちらついた。


魔法を放ってから既に、かなり地面に近づいてきており、恐怖のあまり目をギュッと瞑った。


その数秒後、急に身体に巻きついていた強力な重力がなくなった。


恐る恐る目を開けると、あおが自身の顔を覗き込み、微かな笑みを浮かべていた。


「……ありがとう、君のおかげでギルド長の遺言を達することができた」


頬をほんのりと赤く染めてお礼を言うあおに自身は再度心を奪われた。

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