03
陽射しが窓から差し込み顔を照らす。
既に日は高く登っているようで、ジリジリとした暑さに耐えられず起き出すことにした。
大きく伸びをして身体を反らすとあちこちからパキパキと小気味よい音が聞こえてくる。
また、昨日の長距離を徒歩で移動したことで筋肉痛にもなっているようでズキズキとした痛みが走る。
だが、一日歩き続けていたにしては痛みがないことに気づいた。
「一日中歩いてたからもっと辛いかと思ったけど……転生させてくれた人の言ってた身体が強くなるってほんとだったんだな」
ラーム街に着くまでの間に一度も接敵することなく、ひたすら歩いていただけなので実感が湧かなかった。
だが、こうして翌朝に筋肉痛の痛みがあまり無いことから、現世の身体とは違うということと気が動転していたとはいえ、あの真っ白な空間で喚きすぎたことに羞恥心を覚えた。
「……この世界では体が強くなったこともわかったし今日はあの時もらった能力を使ってみたいな。昨日は一度も使わなかったし」
今日の予定を簡単に立てると、身支度を整え朝食を貰うために食堂へと向かった。
食堂にはほとんど人がおらず、入口の壁伝いにお盆が数枚積まれている。
そこから一枚抜き取り、鍋番をしているおばちゃんの元へ行く。
「おはようさん、遅かったねえ。もう少ししたら片付けようと思ってたんだよ」
「おはようございます。すみません、歩き疲れてしまってて……」
「大変だったんだねえ。どこから歩いて来たんだい?」
「草原の方ですよ。一面緑ばかりで辟易としました。この街に入る頃には日が沈む直前でしたよ」
「あの草原から来たのかい?日が沈むと変な声やガチャガチャ音が聞こえてくるみたいだから昨日のうちに入れてよかったね。ほら、朝食だよ」
おばちゃんはコンソメスープを彷彿とさせる汁物とパンをお盆に載せて渡してきた。
「食べ終わったら席に置いといてちょうだい。後で掃除する時に片付けるから」
そう言うとおばちゃんは厨房の奥へ入っていった。
「さっさと食べてお待ちかねの戦いに行こうかな」
近くの席に座り朝食を手早く済ませるのであった。