47
青年たちは歓喜の声を高らかに上げる。
それに混ざって魔法使いの一人も喜びを口に出した。
あおはそいつを睨みつけ、血だらけになったギルド長の傍に駆け寄り、一言一句聞き逃さんばかりに耳を近づける。
ギルド長があおに何かを伝えると、自身に視線を向け、口をぱくぱくと動かすと、目を閉じて眠るように微動だにしなくなった。
それを確認すると、あおは何かを振り払うように頭を振ると、手をパンパンと叩いた。
その手をギルド長に向け、火の玉をぶつけた。
かなりの高火力だったようで火柱は上がらなかったものの、ジュウウウとその場で音を立てる。
魔法の効力が消えると、そこには炭しか残っていない。
床の木材も、遺体も無くなっている。
その光景に先程まで喜んでいた青年たちは、口を大きく開けたまま唖然としている。
それに対して魔法使いたちは自身と同じようにあおの力の片鱗を見たことがあるようで、動じていない。
むしろ、食い入るように見つめている。
「……あなたたちも焼かれたい?」
「ひい!」
あおの一言で青年たちは顔を真っ青にし、死を感じているのか小刻みに震えだした。
ある者は涙を浮かべ、ある者は下半身のみを濡らしている。
「私たちはこの街を破壊する。巻き添えをくらって死にたくないなら街から出ていきなさい。タイムリミットは昼だと仲間にも伝えて」
青年たちは腰が抜けているようなので、彼らをそのままに、あおは裏切り者の魔法使いをつまみ出した。
「ギルド長は私のほとんどの魔力を使ってでも彼らに力を示すよう指示を受けた」
てっきりこの後の作戦に響いてこない程度に抑えたものとばかり思っていた。
「そもそもこの人数では作戦を成功させることはまず不可能。それならばここで力を示して、今後邪魔されないようにする方がいいと思ったからギルド長の判断に従った。」
「おれたちだけで出来るわけがねえ!」
魔法使いの一人が叫んだ。
「そもそもおれとこいつはランクCになったばかりの新米だ!そこの珍獣ハンターも最近特別に昇格したばかりで実力も定かじゃねえ。あんたはランク幾つだ?」
「わしはランクBじゃが、破壊魔法はあまり得意ではないの」
「それならここでおれたちは辞めさせてもらう!この依頼に参加すればまあまあな金額が手に入ったが、依頼主は死んじまうし、住民には命を狙われるしやってられるか!」
彼はそう言い放ち出ていく。
後を追うようにもう一人も出る
「……わしも抜けさせてもらおうかの。街の破壊は魅力的じゃが残った面子がの」
魔法使いたちの最後の一人が出ていった。
残ったのは自身とあおだけだった。
「……どうする?」
「ギルド長の遺言を実現させる。私たちだけになってもお世話してもらった義理を返す」
「……そうか、分かった。おれも協力するよ」
青年たちもいつの間にかいなくなっていたので、とても広いギルドで二人きりで腹ごしらえをする。
お互いに無言のまま昼食を食べ終えると、噴水に向かった。