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「君たちはどうしてここに来たんだい?」
学者は噴水に桶を突っ込みながら訪ねてくる。
「人伝に聞いたので信憑性には欠けますが、最近噴水で何かが出ると聞いて気になって来ました」
「そんなことも知っているのかい。このことは一般市民に伝わらないように口止めしてるはずなんだけどね。意外と裏社会とも繋がりがあったりするのかな?」
酒場で酔っ払った冒険者が周りに聞こえるぐらい、割と大きな声で言ってたなんてとてもじゃないけど言えない。
職員も一切注意する素振りがなかったから、そもそも情報封鎖したっていうのは、この人の勘違いなんじゃないか?
「……昨日ギルドで騒いでた人が話してたのを聞いた。今回のことはその人とフーヌって人が見たのも知ってる。口止めしてるっていうのはあなたの勘違いじゃないの?」
「な!?それはほんとうなのか!?ちょっとギルドに聞いてくる!」
学者は荷物を放り投げてギルドに駆け込んでいった。
彼が水を入れていた桶からジャバジャバと溢れ、荷物の底をびちゃびちゃに濡らしているのを眺める。
ここで話の通りに何か起こらないか、あおとぼんやりしながら待った。
学者はなかなか帰ってこず、ずっと立っているのも大変なので、近くのベンチに座った。
その隣にあおも座り、何も変化がない噴水を眺める。
ジャバジャバと一定のリズムを刻み、噴水の飛沫で気温が下がる。
そこにぽかぽかとした陽気を感じ、眠気を誘う。
大きく欠伸をしていると、肩にあおがもたれかかってきた。
見た感じ普通の少女なのに、何かが突き刺さっているように肩が痛いので、ぺちぺちと頬を叩き一度あおを起こす。
「肩は痛いから寝るんだったら横になってくれ」
ぽんぽんと自身の太ももを叩くと、寝ぼけているのか眠気に負けたのかは不明だが、猫のように身体を丸めてベンチにすっぽりと収め、太ももに頭を乗せてきた。
その横顔がとても愛しく見えて、優しく頭を撫でると、撫で方が上手かったのかすぐに寝息を立て始めた。
そのまま撫で続けていると、指に硬い感触を感じた。
不思議に思い、優しく髪をかき分けると小さな角が見えた。
それは骨のように真っ白だが、黒い線が等間隔で刻まれている。
それはまさに角だった。
ギルドを含め、冒険者間ではあおのことを青鬼と呼んでいる。
その由来はあおは容姿で鬼は種族だと誰かが言っていた。
今見えているのは左目の上にあったので、もしかしたら右側にもあるだろうと思う。
もし、鬼が種族なのだとしたらあおはかなり前に本で読んだオーガなのかもしれない。
そこにはオーガはタフなので、休みなく長時間動き回ることが可能、だと記載されていたような気がする。
あおがオーガなのだとしたら、レイス退治の時に自身と一緒の時はまだしも、一人で行っていた時にあれ以上動き回っていられる秘訣なのではないか。
乙女の秘密を暴いたような爽快感が自身を駆け巡った。
おはようございます。
私の作品を読んで下さりありがとうございます。
大変申し訳ないのですが、本日の夕方の投稿に執筆が追いつかないため、お休み致します。
この続きは翌朝投稿致しますので、お待ちください。