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初めてあおとレイス退治に行った後に利用した料亭で、いつものように報酬をもらう。
もちろんここの代金は自身の分配の中から支払われている。
ここでケチケチするよりも、あおに捨てられないように首の皮を繋いでいた方が良いと考えたからだ。
「酒場の方で噴水がどうとか言ってたけど、何か聞いてた?」
「ああ、フーヌと酔っ払ったやつが噴水から黒と緑の何かを見たそうだ」
「そう、これまでなかった事が起きたってことだから、できるだけ情報を集めて。それから、明日は噴水に行く」
「わかった。実はおれも噴水から出てきた物を見た気がしたんだが、思い出せないんだ」
「……そういうのはわかるようになってから言って」
「すまん」
あの日からあおのご機嫌取りをしていたため、頭が上がらなくなってしまった。
この後は談笑を交えながら絶品の料理を舌鼓を打つと、宿に帰った。
翌朝、とはいっても昼近くなのだが、食堂では既に朝食が片付けられていた。
「……おはよう」
食堂の隅っこで、あおが地図を広げて待っていた。
「昨日、噴水に行くって言ったのに。なんで早く起きてこなかったの?」
あおはその綺麗な瞳の下に色の濃い隈を作って疲れきった顔をしていた。
「それは、やっぱりレイス退治の後はヘトヘトで、その、ごめん」
自身は尻すぼみになりながらも言葉を続けていたが、あおの様子を見ていると、ゆっくり寝ていたことが段々と申し訳なく感じる。
「たしかにレイス退治の後は疲れてる。だけど、昨日ご飯を食べてる時に約束した。」
自身を非難する目を向けてきたので、咄嗟に視線を逸らす。
「ほんとごめん、噴水にいる間寝ててもいいから許してくれよ」
「……そんなことで許されると思うなんて私を軽く見すぎてる。お腹がすいたら買い出しにも行くように……それで許す」
そう言うとあおは宿を出て行ったので、自身も後に続いた。
噴水に着く頃には、自身の朝食兼昼食と、あおの昼食兼小腹が空いた時用にたくさん買い込み、あおのアイテムボックスに詰め込まれている。
代金は自身が全て支払ったので、リュックサックがいつも以上に軽く感じる。
それもそのはず、小腹が空いた時用にかなりの量を買い込んだ。
その大部分は主食となりうる物ばかりだったので、今後のレイス退治終わりの朝食として食べるのだろうことが窺えたので、何も言わずに支払ったのだ。
噴水には、ギルドにいた学者が桶を始め虫取り網や、木の棒を担いで噴水の周りをうろうろしていた。
あまりにも挙動不審な様子なので、住民は噴水に近づこうとせず、遠巻きに眺めている。
「__あ、どうもこんにちは」
学者がこちらに気づいたようで手を挙げて挨拶してきた。
こちらも見つかったからには仕方がないと諦め、ぺこりとお辞儀をした。