02
門を潜るとそこには薄暮ということもあり、仕事終わりだろうか、街道には多くの人が溢れている。
道の脇には露店がずらりと並び、美味しそうな匂いを漂わせて活気のある声が飛び交っている。
そういえばこの世界に来てから何も口にしてないな。宿を見つける前に何か買い食いでもするか。
左側の街の中へと進んで行く人の波に乗りながら、露店を物色していると__
「お、兄ちゃん買ってかないかい?焼きたてだよ!?」
露店の客引きをしながら、焼き鳥を焼いているおっちゃんに声をかけられた。
「ひとついくら?」
「5本で銅貨5枚だよ!」
そう言いながら台上の紙の包みを顎で指し示す。
もう片方の手には焼きたてなのだろう、湯気を出す串を持って包に入れようとしているところだった。
それは現世の焼き鳥に比べて身が多く食べ応えがありそうだ。
そんなものを見せられたら、もう唾液が止まらなくなってしまい__
「買った。銀貨1枚しかないがいいか?」
「いいぞ、ほら」
おっちゃんは銅貨5枚と包を渡してきた。
「ありがとう。もし良かったら宿の場所教えてくれないか?」
「こちらこそだ。宿屋はそこの曲がり角を左に曲がったところだ」
それだけ言うとおっちゃんは客引きに戻り、活気のある声を張り上げ始めた。
もう一度ありがとう、と言うと教えてくれたように曲がり角を曲がると、そこに客引きだろうか、腰にエプロンを付けた女性が立っていた。
「すみません、まだ部屋空いてますか?」
「一泊銀貨一枚ですよ。ご利用になりますか?」
手持ちが銅貨五枚しか無くなってしまうが、この宿以外には、宿屋であることを示す看板にしか明かりが付いておらず、人は立っていない。
もし、ほかの宿を探している間にここの部屋を確保されてしまうことを考えると、背に腹は変えられんと決心し、泊まることにした。
そこはラーレライという宿で、他の宿より少し割高らしい銀貨一枚の宿泊料の中には、体を拭くお湯とタオルや朝食込だったので、ラッキーと思いながら部屋へと向かった。
露店で買った焼き鳥は、塩であっさりとした味でとても食べやすく、想像通り歯応えもあり、異世界初の食事はとても美味しかった。
寝支度を整え、固めのベッドに入り寝ようとした時、天井からギシアンと聞こえだし、少し悶々としたが一日疲れていたこともあって、すぐに寝てしまった。