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「昨晩、青鬼とレイス狩りに行ったそうだな」
「ええ、まあ。あおから戦い方を教えて貰って、その通りに戦っただけなんですけどね」
「あいつの言う通りって相当過酷な事だったと思うが、よくできたな。まあ、今回呼んだのはその事で、青鬼と共に行動することができる程の実力を持っていると我々ギルドは判断した。よって特例によりBランクへ昇格とすることとなった。帰る際に受付へ冒険者証を提出するように」
用は済んだと言わんばかりにジェスチャーで退出するように促されたので、執務室から退出した。
忘れて帰ってしまうといけないので、依頼を見繕う前に冒険者証を受付に提出することにした。
「どうぞ、お預かりした冒険者証です。特例での昇格ですので、少しずつ依頼難易度を上げていくなどの工夫して、無謀なことはせず頑張ってください」
受付から新しくなったギルド証を受け取ると、これまで使ってこなかったたくさんの紙が貼り付けられたボードへ向かう。
紙には上から適正ランク、依頼内容、依頼人の順で記載されている。
その中からBランクのものを見ると、採集や討伐、人探しなど多様なものがあった。
ここからあまり離れずにできるものを探すと、教会の火起こしというものがあった。
火の魔法を使うことができるので、簡単に出来ると考えこの依頼を受けることにした。
受付で手続きを済ませると教会に向かった。
教会には老若男女様々な人が椅子に座り壁際に吊るされた骸骨に向けて、手を合わせて祈っている。
現世でのキリスト教徒がイエス·キリストを崇めるようなものだろうか。
時折、信者達が空中に丸を描き、それを指先で断ち切る仕草をしている。
「今日という日が来たのは貴方様のお陰です。昨日に引き続き私達を見守ってください」
それに習うかのように他の信者が復唱し、同じ仕草をする。
その様子を見守る修道女がいたので、声をかけることにした。
「すみません、ギルドから教会の火を灯しに来ました」
現世で宗教に痛い目にあっていたので、できるだけ低姿勢に、波風立てないよう最新の注意を払って接することにした。
「あら、もう来てくださったんですね。ああ、杏子様。貴方様のお導きで__」
修道女のありがたいお言葉が、彼女の気が済むまで続けられた。
火を灯す作業に移れたのは一時間あまり後の事だった。