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出された料理はどれも絶品でとても美味しかった。
「稼ぎがいいのになんでラーレライなんかに泊まってるんだ?もっといい宿屋なら沢山あるのに」
「ここの代金が高いから、あの宿ぐらいの安さじゃないと泊まれないから」
ナプキンで口元を拭う。
「ここは一食金貨三十枚もする。でも、この美味しさを知っているから、今更グレードを下げることは出来ない」
たしかに美味しかったがそんな高いのか……
金銭感覚の違いに軽く目眩した。
「それに、ここほどゆっくりできる場所はない。外にいれば常に誰かの視線を集めるけど、ここはそういうのがないからお気に入り」
こんな美少女の有名人がそこら辺の食事処にいたら見てしまう。
その視線が日常的であれば、煩わしくなるのは当然だろう。
「……もう帰る?それともまだここにいる?」
「もう少し話していたいんだが、いいか?」
「わかった」
そういうとあおはアルコールを頼み、深夜近くまで飲み続けた。
気がつくとベッドの上にいた。
昨晩はあおの事を知るために、一緒に食事をして色んな話をした気がするが、アルコールを飲みすぎたのか、飲み始めてから何を話したか何も覚えていなかった。
それどころか頭がガンガンと痛い。
だが、あおと少なくとも仲良くなれたと思うとこの痛みは痛くも痒くもない。
__おそらく二日酔いだろうと思われるので、今日は一日ゆっくりすることにした。
この後食堂で遅めの朝食を頂くと、外に行くと常にガヤガヤとした声が頭に響くと思い、部屋でやることも無くゴロゴロし続けた。
翌日、二日酔いも大分抜け、今日はギルドに行くことにした。
ギルドの中に入ると至る所から珍獣ハンターと聞こえてきた。
「よお、珍獣ハンター。今日は何を狩りに行くんだ?」
今日も野次を飛ばしていたルドガーが、こちらに来て、声を掛けてきた?
「その珍獣ハンターってなんだよ」
「そりゃお前さんのことよ。出会うことも難しいリザードマンを倒し、青鬼を手懐ける。珍獣ハンターの異名に相応しい働きじゃないか」
なんだそれ、と呆れていると酒場にいる人がいつもよりかなり少ないことに気づいた。
「なんでこんなに人がいないんだ?いつもならもっといるだろう?」
「ああ、他のやつらはギルド長が来てるもんで仕事に行ってんだよ」
はあ、とため息を吐くと元いた席に戻っていった。
昨晩あおが言ってたことが現実になりそうな予感をしながら、受付に声を掛ける。
案の定ギルド長が呼んでいるらしく、執務室に行くように言われた。
何を言われるんだろう、と緊張から胸が高鳴った。