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ギルドから出たのは夕飯に丁度いい時間帯だったので、あおと食べることにした。
あおの行きつけの店に連れていってもらうと、そこは貴族様御用達という雰囲気が感じられる建物だ。
外装は至って普通の店だと思われたが、入店してみると天井にはシャンデリアが吊るされ、煌びやかな光を店内に降り注いでいるが、決して眩しい類ではなく、豪華さを演出している。
また、小さな個室しかなく、その全ての取っ手に大きな宝石が一つ埋め込まれている。
あおがスーツを着た年配の受付の人に何かを言うとこちらへどうぞ、と案内された。
案内された場所は先程の場所とは違い、扉は何かの革だろうか黒一色とシンプルでその品質の良さが際立ち、とても綺麗に見える。
中に入ると、その革がふんだんに使われていた。
椅子はもちろん、床や壁も扉で使われていた革だろう。
テーブルには真っ白なクロスが敷かれて、幻想的な空間が生まれている。
「お料理はいつもと同じでよろしいですか?」
「うん、それを二人分お願い」
「かしこまりました、少々お待ちください」
いつもので通じるほど通いつめるのにいくら掛かっているのだろうか。
いつもの食事よりかなりありがたみを感じながら頂くことになるだろう。
男性が部屋から出ると、あおがアイテムボックスから今回の報酬を取り出すと、ちょうど半分になるように金貨を入れ替えて、その片方を渡してきた。
「今回の報酬、受け取って」
「ありがとう、だけどこんなにもいらないからここの支払いお願いしてもいい?」
おれは袋の中から十枚ほどを手に取ると袋を返した。
「ほんとにそれだけでいいの?君の方がたくさん倒したのに」
「ああ、これだけあれば十分だ」
「……そう、今後なにか助けて欲しい時はいつでも力になるから言って」
あおは申し訳なさそうに袋を受け取るとアイテムボックスにしまった。
「君は明日からどうするの?またリザードマン退治に行くの?」
「いや、特に決めてはいないが早くランク上げられるようにしていくつもりだ」
「今日の成果を二人で出したのは、偉業と讃えられてもいいもの。きっと明日になったらギルド長に呼び出されるから、覚悟してるといい。高ランクの人は誰しもが通る道だから」
あおが嫌そうな顔をしながら忠告してくれる。
しかし、そんなに嫌な思い出になるほどのことをされるのか……
ギルドに行くのが憂鬱になってきた。