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青鬼__あおはそう呼ばれていた。
たしかに髪は寒色で青色だ。
だが、なぜ女の子に鬼?
「青鬼ってどうしてそんなふうに呼ばれてるんだ?」
「それはですね、彼女がそういう戦いを我々の前で過去に披露したからですよ。五年に一度、キナコ邸宅跡に作られたコロシアムで各国から腕に覚えのある者達が集い、武闘会が行われるんです。そこで彼女は三位の成績を収め、その戦いぶりから青鬼の異名を冠したんですよ。由来は、青は彼女の容姿を表し、鬼は彼女の種族特有の戦い方からですね」
おそらく、あおは人族以外の体力がかなりある種族だから、一晩中舞を踊るかのように動き続けられたのか、と一人納得した。
「そろそろ依頼の話をしましょうか」
学者は真っ黒なシートをカウンターに広げた。
そのシートの上に、アイテムボックスから出した透明な布を、あおが一枚ずつ並べていく。
これまでは透けるばかりで、微妙な空間の歪みからそこにあると知ることが出来たが、シートの上に置かれると、白く色が付いて見えるようになった。
かなりの量があったはずなので手伝おうとするも、一人で並べたいと言われ、じっと待ち続けた。
それから十分後、ようやく全てを並べきったらしい。
その量は、一つのシートに約五十枚乗せられ、カウンター三つ分を占めていた。
二人だけでこの量を倒したと思うと誇らしげな気持ちになる。
その量を見て、学者は他の職員と一緒に一枚ずつ検品している。
報酬をもらうのにはもう少し時間が掛かりそうだ。
検品が始まって三十分後、周りからの視線に晒され続け、そろそろ宿に戻りたくなってきた頃、ようやく終わった。
「検品した結果、二十二枚破損が激しかったので買取できません。しかし、残りは全て買い取らせていただきます。依頼達成報酬の金貨五十枚と歩合手当の金貨三十枚です。お確かめ下さい」
学者と一緒に検品していた職員の一人が、あおに布袋を手渡す。
それをあおは簡単に目を向けて確認するとアイテムボックスにしまう。
続いて買い取られなかった透明の布は要らないようで廃棄するように頼んでいた。
これが世界トップランク冒険者の仕事ぶりなのだと、はっきりと見せつけられた。
この子の隣で生きていくには肩を並べても恥ずかしくないぐらい強くならなくてはならない。
鍛冶場で火をつけたり、リザードマン倒してる場合じゃないと気付かされた。
これまでは安全な冒険を望んでいたが、一夜一緒に戦ったからか、多少危ない戦いでも大丈夫だろう、と妙な自信が湧いてきた。
明日から本気出す!