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レイスは街の外に広がる草原では、どこにでも発生するらしいが、今から行くのはより強力な上位種を倒しに行くそうだ。
そこまで行くのにだいぶ時間が掛かるようなので早く出発する。
目的地まで草原がしかないので馬車で行く方が早く楽に着けるらしいが、目標が夜にしか出てこず、馬がレイスに狙われると今後使い物にならなくなるので、使用料とは別に違約金を支払わなくてはならない。
そんなことなら多少疲れてでも徒歩で行く方が幾分かマシだ__とあおは考えついたらしい。
ちなみに、馬車を借りると一日金貨二枚、違約金は金貨二十枚とかなり高価だ。
かなり懐が潤っているとはいえ、一回の依頼でそんな大金を払いたくはないので徒歩で行くことにした。
昨日買い揃えたリュックサックは道中思ったよりも負担になった。
延々と続く凸凹した地面を踏みしめて歩くことに慣れていないことに加えて、リュックサックの重さである。
短時間であれば難なく背負って歩けるのだが、長時間歩き続けるには休憩を合間合間に挟まなければならなくなった。
その状況に呆れたあおがアイテムボックスに収納してくれたので、リュックサックを背負っていた時より早く楽に移動出来た。
しかし、予定より大分遅れたようなので夕方頃からは歩きから走りに変わった。
二人して汗をだらだらと流しながら目的地に着いたのは、夕日があと僅かで沈みそうな時だった。
「まさかこんなに予定より遅れるなんて思わなかった。夜通し戦闘しないといけないのに……最悪」
「それは、すまん……それにしても夜通し?レイスの上位種を倒したら帰るんじゃないのか?」
はあ、とあおはため息をついた。
「対象はうようよ出てくる。それに日が出ないと退治したことを証明出来るものが出てこない」
あおはアイテムボックスから自身のリュックサックを取り出すと、地面に置いた。
「そろそろ来ると思うから準備して」
たしかに夕日がもう見えなくなりそうだ。
視界の端にポコッと地面が少しずつ膨らんできているとこが出てくる。
「……来た」
あおは静かに呟くとアイテムボックスから短剣を両手に構え、フレイルと呪文を唱えると刀身がうっすらと赤く光る。
そして、地面からスーッと出てこようとする半透明でありながら骸骨のような形をしたレイスに向けて突き立てると、シュボッと音を立てて空気中に霧散した。
それをきっかけに次々とレイスが発生する。
人間の骸骨やうさぎなどの動物の骸骨と様々な種類がある。
それを舞を踊るようにあおは切りつけ、霧散させていく。
一通り周囲のレイスを倒し終え、一息つく。
「だいたいこんな感じだから、君でもできるでしょ?」
剣の能力もあるしできないことは無いだろう。
ただ、リュックサックを背負いながら戦闘しないといけないのなら、持ってこない方が良かったな……
重い腰袋がリュックサックに詰め込んだ事で、左右のバランスが違うということがないだけ、マシだと思うことにしよう。
こうして地獄の一夜が始まった。