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雑貨屋も道具屋と同じように女性客で賑わっている。
ここはアクセサリーや香水を始めとした小物類や防具、鞄、靴、服が売られており、姦しい声が常に聞こえてくる。
男性陣は道具屋と同じような形で来店していた。
またか、と一つ息を吐き、戦闘で邪魔にならないように背負えるリュックサックを探す。
色々と種類があったが、オシャレより実用性を重視したものを選んだ。
それは多くのポケットがあり、かなりの量が収納出来る。
これがあればアイテムボックスが無くともかなりの物資を持ち運べるだろう。
雑貨屋で代金を払うと、そのまま道具屋でリュックサックの底部分いっぱいに紫のポーションを購入した。
その頃には日が落ちる直前だったので宿に戻り、また明日からの活動に備えて早く寝ることにした。
今日でようやく冒険に出るための準備が整ったと思うと、明日からが楽しみでなかなか寝付けなかった。
目が覚めたのはそれほど遅くなかったようでまだかなり多くの人が食堂にいた。
お盆を取って食事を貰い、席を探しているとあおが黙々と食べているのを見つけた。
「隣いいですか?」
「いいですよ」
今日もあおは地図を広げながら食事をしていた。
「……君、見かけによらず強いんだね」
「はぇ?」
いまからスープを飲もうと口を開けていた時に話しかけられたので、間抜けな声が出てしまった。
「……急にどうしたんだ?」
そのままスープを飲み、聞き返した。
「昨日ギルドに行ったらみんな君の話ばかりしてた。つい最近入った新人で、戦闘もろくに出来なさそうな人が、幻のリザードマンを倒したって騒いでた」
たしかに半年前に現れたっきり姿を見せなかったそうだが、色違いなだけなのに幻のリザードマンね……
まあ、あのリザードマンはそう呼ばれてもおかしくない類を見ない強さだったから、ある意味当たりなのか。
しかし、自身の評価がかなり辛辣だ。
「それで、もし良かったら手伝ってくれない?」
「それはあおの依頼をってこと?」
あおはむぐむぐと食べながら頷いた。
「どんな依頼か教えて貰ってもいいか?」
「あおの依頼は夜になったらこのラームの街の外に出てレイスを退治するの」
……酒場に行った初日に聞いた、草原で戦ってたのってお前だったのか。
世間って狭いなあ。
「必要な道具ってあるか?」
「火の魔法さえ使えれば問題ない」
ズズズと残りのスープを飲み干す。
「手伝わせてもらうよ。いつから行くんだ?」
「ご飯食べたらすぐ」
あおはもうすぐで食べ終わりそうなので自身も残りを口の中へ掻き込んだ。