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これまで食べたことの無い果物の甘さに二人して舌を巻く。


その顔をお互いに見て思わず笑みがこぼれる。


そのおかげで緊張が解れたのかキュレルがフードを脱いで美味しそうにりんごを頬張っている。


口に含んでいたりんごを食べ終えるとキュレルがこちらに向き直る。


「さっきギルドで頂いた報酬の事なんですけど、七対三でどうでしょう?」


「いや、キュレルはこれまでチームを組んでた人が亡くなって、これからも同じように働けるかわかんないんだから半分でいいよ」


「今回の分は賢者様が倒したのですから全額持って行かれても問題ないです」


そう言うとアイテムボックスから金貨が詰まった袋を取り出し腰掛けているベッドに置いた。


ここで誘惑に負けて全額持っていく場合と半分にする場合を想像してみる。



全額持っていけば間違いなく金にがめつい印象を与えることになり常に後ろ指を刺されることになることは想像に難くない。


しかもこんな大金が貰える魔物を倒せる実力を持っていることはすぐに他の冒険者たちにも広がるだろう。


それに対し半分にした場合は人を気遣える印象を与えることができるだろう。


キュレルは仲間を全員無くしたことで冒険者の人と一緒に依頼を受けることになるだろうし、その際におれの話をするかもしれない。


今後もラームの街を拠点にして暮らしていくには、ここで全額持っていくのはありえないだろう。



「キュレルの気持ちは嬉しいけど、おれはアイテムボックスが使えないから、そんな大金を持ち運ぶだけでも大変だ。たから半分だけくれないか?」


「そうでしたね、そういうことなら分かりました。半分ずつでお願いします」


キュレルはそう言うと袋をひっくり返して何枚かの束を作っていく。


その間、果物の山からいくつか取り出してキュレルが分け終えるまでひたすら皮を向き続けた。


ここから出たら剣を買いに行こうと思いながら__




あれから数十分程が経ちキュレルが金貨を分け終えた。


こちらもキウイフルーツやみかん、ぶどうなどの皮をナイフ一本で皮を剥き、切り分け、山のように小皿に積んでいる。


「お疲れ様。金貨を分けてくれてる間に果物切っといたから食べてくれ」


「ありがとうございます。半分にしてもかなりの量なんですけど……ほんとにこんなにも貰っていいんですか?」


「ああ、いいよ。むしろもう少し持っていってもいいぐらいだ」


自身が想像していたよりも金貨は多かった。


自前の腰袋に全部入れるとまあまあ重く、アイテムボックスが使えないことがとても不便に感じた。


アイテムボックスを使えるキュレルは袋に詰め終えるとポイッと入れて特に重さも感じていないようだ。


羨ましく思いつつアイテムボックスの魔道具とかあれば絶対に買おうと心に決めた。



その後、小皿に積み上げた果物を食べ終えるまで談笑に没頭した。



余談だが会計の際にキュレルに払わせるのは格好が付かないので全額支払った。


……分けて貰った腰袋の金貨が半分近く持っていかれたのはご愛嬌というものだろう。

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