21
思っていたより疲れていたようで日が高くなった頃に目を覚ました。食堂にはほとんど人がおらず、朝の活動時間から時間が経っていることからキュレルも動き出しているだろう。待たせるのも思い、手早く朝食を済ませた。
ラーレライの受付には案の定キュレルがフードを深く被って待っていた。立ったまま居眠りをしているのか身体が前後に揺れている。
「おはよう、待たせて悪い」
「……おはようございます、さっそくギルドに行きましょう」
手短に挨拶を済ませギルドへ向かった。
ギルドも冒険者たちは仕事に行き、酒場にもほとんど人がいない。
「なんでこんなに人がいないんだ?」
「ギルド長が来てるからじゃないですかね?毎回来る時にはこんな感じですし」
強すぎてみんな怯えてるんですよと苦笑いしている。睨まれたりしたら嫌だなーと思いつつお世話になっているネコミミの受付の人に案内してもらった。
案内された場所は執務室のようで、大柄な男性が革張りの椅子に座り、カリカリと羽根ペンを走らせていた。
「昨日話したリザードマンを討伐した方を連れてきました」
それでは失礼します、とギルド長の返事も待たずに出て行ってしまった。ばたんと音を立てて扉が閉まると同時にギルド長は羽根ペンを置く。
「わざわざ来てもらってすまない、昨日の件について少し話をしたかったのだ」
とても威圧感のある声色だ。これは怯えても仕方ないと少し笑っている足に力を込め、目立たないようにする。
「昨日君たちが討伐してきたのは通称湖の主と呼ばれている。半年ほど前に色違いのリザードマンの存在を確認したが、それから一度も姿を見なくなったことから住処を変えたとばかり思っていた。そのせいでチームメンバーが亡くなったことに対し謝罪させてほしい、ほんとにすまんかった」
ギルド長は頭を下げて誠意の感じるような謝罪をする。
「頭を上げてください!受付では聞きませんでしたけど、他の冒険者の方から噂程度でしたけど話を聞いてましたから。それに、あの時は逃げられるような状態じゃありませんでしたし」
だから謝られるような事じゃありません、とキュレルは気丈に振る舞う。
「……そうか、なら謝罪はやめよう。件のリザードマン討伐に対しての特別報酬を用意したので受け取ってくれ」
パンパンになった布袋を取り出すとキュレルに渡した。口紐を解いてその中身を見ると固まってしまった。自身も中を覗くと今にも溢れそうな量の金貨が見えた。
これまでほとんど稼ぎのなかったらしいキュレルにとってこんな大金を貰えるというのだから固まってもおかしくない。
「あのリザードマンは他のリザードマンとは違い、かなり高い魔力を尻尾から検知したことからこの金額が妥当だと考えられたものなので返金しないように」
用は済んだと言わんばかりにジェスチャーで退出するように促されたので執務室から退出した。
……報酬半分くれないかなー