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あれから一時間、湖周辺のリザードマンを退治し続けた。どれも呆気なく終わったので異世界ちょろいなーと気を抜いたとき湖からザバァ!と真っ青な表皮をしたリザードマンが出てきた。
それはこれまで倒してきたリザードマンより大きく、3メートルは下らないだろう。身体中に細かな傷跡があり、筋肉が引き締まっている。あれでボディーブローなんてされた日には呼吸ができなくなりそうだ。手には銛のような形状をした鋭い木に魚が数匹突き刺さり、ピチピチと足掻いている。
アルフォンが倒したリザードマンの尻尾を切り取っているのをそれは認識し、魚の刺さった銛を投げつける。しかし、それが出てきたのを見ていたこともありその場から飛び退く。鎌をまたどこかにしまうと腰に下げた剣を抜いた。
「あいつを倒すよ!これまでと色は違うけど種類は同じリザードマンだから作戦通りに確実に行こう!」
その声をきっかけにリザードマンは湖からこちらへ向かい、キュレルとミリーは武器を構え、おれはこれまで通り頭部を炭になるように想像しながらファイアを唱える。
先程まで湖に入っていたことからあまり火が上がらず火傷を負わせるだけに止まった。さらに憤ったリザードマンは咆哮をあげる。それを受けてアルフォンが後ずさりし、ミリーは座り込んでしまう。自身とキュレルも恐怖に駆られた。
各々が気持ちを落ち着け、戦闘に集中しようとしている間にリザードマンが陸に上がり一気に距離を詰めてきた。アルフォンまで近寄り体当りする。ゴシャ!と交通事故のような音を奏でアルフォンが吹き飛ばされ、木にぶつかると空気が抜ける音をあげピクリとも動かなくなった。
その光景にミリーは再度その場に座り込みキュレルは呆然としている。自身も一瞬の出来事で頭の中が混乱しているが、優れた能力を持っているという自負から戦意を喪失するまでには至らない。
リザードマンはギョロ目でミリーを見ると先程と同じように一気に距離を詰め__蹴りつけた。アルフォンの時とは違い、柔らかいものを潰した時にするぐちゃ!とした音を響かせてミリーも近くの木に激突する。そこでもぐちゃ!と音がしたので見なくともどうなったか想像に容易い。
リザードマンの足は真っ赤に濡れらし、次の標的をどちらにしようか目をぎょろぎょろ動かしている。その顔は未だ憤怒しているようだ。
その様子にキュレルは先程のミリーのように座り込み、呆然としている。それに対し、おれはまだ死にたくない! チートで無双したい! と生き残りたい一心で、『奴の頭部が蒸発してしまえ!』と強く念じ、ファイアを唱えた。