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数時間掛けて、他愛もない会話をしながらリザードマンが生息する湖へ移動する。
リザードマンの身体の表面は鱗で覆われている。
僅かな隙間に刃物を突き立てるか、鈍器で叩く、火で炙るといった攻撃以外はダメージを与えることが難しいようだ。
キュレル以外は火の魔法を使うことが出来ず、火力不足で依頼を断念しようとしていた時、偶然火の賢者と呼ばれているおれを見かけて、声を掛けてきたそうだ。
「そろそろお昼にしましょう。ぼくとミリーで狩ってきますから、キュレルとカケルさんは火を起こしていてください」
街を出る時になにも食糧を買わずにここまで来たので、昼食はどうするのかと思っていたが……なるほど、現地調達か。
アルフォンとミリーは草原を駆け野生動物を探している。
キュレルは地面に手を置いて何かを詠唱し、最後にアースクラフトと呟いた。
すると、手を置いた場所を中心に小さな囲炉裏が作り出された。
草原との境界線にはご丁寧に石で仕切られている。
その中にキュレルはキラキラと光る石を中央に撒いた。
それを見ているとキュレルは火を付けるように催促してくる。
「どれぐらいの火力があればいい?」
「さっき撒いた魔石は一定の燃料を供給し続けますから、ある程度の大きさがあれば大丈夫です。」
学生時代に登山した際にキャンプをしたことがあったので、あの当時を思い出しながら強く念じ、「ファイア」
小さな火種が魔石の中央から発生し徐々に火の勢いを強めていく。
一瞬のうちに小さく積み上げられた魔石全体に火が広がった。
その光景にキュレルは目を見開いた。
「……いま、ファイアと仰いましたよね!? どうやってそんな小さな種火を出したのですか!? それにそんな短時間で均一に燃え広がるなんて!?__まさか本物の火の賢者様なのですか!!」
キュレルは鬼気迫る勢いで詰め寄ってくる。目が血走っておりとても怖い。
「そ、そうだ。想像した火の状態を再現したんだよ。だから落ち着けって」
「想像通りの魔法ができるというのですか!どうやったらその極地まで辿り着けるのですか!?このお方こそ本物の賢者様です!」
その後、アルフォンたちが兎を数羽狩り、戻ってくるまでひたすら質問攻めにされた。
だが、上手く受け答えができず__想像した通りの魔法を実現させられる賢者様へと渾名がクラスチェンジしたのだった。