12
太陽が登り始めた頃に目を覚ます。
昼間に比べて肌寒く毛布が恋しいがゴブリン退治をしたい一心で起き出した。
食堂には既に多くの人がおりそれぞれ起きたばかりなのか、皆ボソボソと仲間に聞こえる程度の声量で今日の予定について話している。
お盆を手に取ると鍋番をしているおばちゃんの元へ行く。
「おはようさん、今日は早いんだね」
「おはようございます、今日はゴブリン退治に行きたくて日帰りで帰るために早起きしたんですよ」
このおばちゃんは一度見た人の顔は忘れないタイプの人なのだろうか、と疑問を抱きつつ盛り付け終わるのを待つ。
「相手がゴブリンだからって油断しないようにするんだよ?」
それだけ言うとお盆を渡され空いている席へ向かった。
そこはカウンターテーブルで、自身と同じようにチームを組んでいないと思われる女性が地図とにらめっこをしながら、ショートボブにしたスカイブルーの髪を耳に掛けスープに付かないようにして黙々と食べている。
マントを着ていて身体の線は分からないが椅子から若干足が浮いていることもあり小柄な少女だ。
「隣いいですか?」
一言少女に断るとこちらに振り向く。
そこには外国人のように目鼻立ちがくっきりしており女優顔負けの美貌をしていた。
少女の前に『美』が付いてもおかしくないだろう__いいですよ、と返事をしてくれる。
「もし良かったらゴブリン退治について教えて貰えませんか?」
美少女との会話をこのまま終わらせるのは勿体なく思い無難そうな話題を切り出す。
「……あなた冒険者になったばかりなの?」
美少女はスープを飲む手を止めこちらを伺ってくる。
座高の高さが影響して上目遣いになっており、その瞳は髪色とおなじ寒色系だが少し色が濃い。
「……あ、ああ、そうだよ。おれ、カケルって言うんだ。君は?」
あまりの可愛さと美しさに見蕩れてしまい、一瞬思考停止しそうになったがなんとか踏みとどまった。
「……あお、みんなからはそう呼ばれてる。」
あおの儚げな声色はどこか人の心を掴むような魅力があるようで、たったこれだけのやり取りでおれの心はいつの間にか彼女の虜になっていた。
「……ゴブリンは集団で行動するからチームを組んだ方がいい。__あなたのような初心者は他にもいるはずだからその人達と行くといい。」
ゴブリンについて情報を聞いていると、集団で行動しているからこちらも数人で行く方が安全だと教えられた。
この機会にあおにチームを組もうと提案するもやることがあるからと断られてしまった。
その後、あおが食べ終わるまで雑談をしてお開きとなった。
終始これまでのような受け答えはできなかった。
これからギルドで依頼を受けるついでにチームを組める人がいるか聞くことにしよう。