プロローグ1
気が付いたら見慣れない真っ白な天井が見える。
「……あれ?……ここ、どこだ?」
起き上がろうとしても何かに拘束されているのか体が動かず、周りをキョロキョロしてみるが目に入るのは全て白い壁。
意識を失う直前までのことを思い出そうとするも、ズキズキとした痛みを感じたことでさらに混乱する。
助けを求め大声をあげようと息を大きく吸い込んだ時……
「おはようございます。意識は戻ってますか?」
頭上の方から男性的かつ優しそうな声色で声をかけられた。
「だ、だれかいるのか!?助けてくれ!体が動かないんだ!」
「それは、あなたが現世で死んだことで魂だけの存在となっているからですよ」
「なにを馬鹿なことを言ってるんだ!体の感覚だってあるんだぞ!魂だけなわけないだろ!!」
自身の置かれている状況に混乱していることで、冷静に話しを聞き入れることができない。
「そう言われましても……ならこれでいいですか?」
そう言うと彼は自身の体を締め付けているものを外したのか、圧迫感が消える。
「おお、ありがとう。これで、動け……あれ?」
起き上がろうとするが力が入らない。
「どうですか?」
「……体が動かないんだ」
「先程も言いましたがあなたは魂だけの存在なんですよ。ここは新しい生命に変換するために前処理をする場所なんです」
その最中に逃げ出さないように拘束していたんですよ、と彼は言葉を続ける。
「今回は現世とは違い多少過酷な世界に生まれ落ちることになるので、少しサービスをしようと思いまして……あなたを特別に連れてきたんですよ」
開いた口が塞がらないとはこのことを言うのだろう。
生前、愛読していた主人公が神から授けられたチートで無双する小説を思い出す。
自分はずっとその主人公のように他者とは違う強大な力で無双することを夢見ていた。
それが今、自身に授けられようとしている__
「チートきたーー!!」
喜びのあまり叫ばずにはいられなかった。