偏差値29 サンウィー湖のほとりで 1
いままでのあらすじ
管理神パンドラによって転生したソウタは転生先の少年、ケイと共に村を訪ねたヒノカグツチノカミ達の斯道で修行する。
途中出会った元王国を滅ぼしかけた竜の竜人ラコン、ケイの幼なじみの村人マインと共に修行をした。
三年の月日が過ぎ、一人前になり、成人したケイ達はカグツチさんの勧めにより王都にある王立魔法学院に入学することになる。
いざ、王都へ!!!
ガラガラと竜車に揺られ、旅は順調に進んでいた。
王都までは街道があり、今はまだ細い道だがそのうち大街道と合流し、そのまま王都に着くことができる。
大街道は道が石で舗装されている。昔の王が民のため、大工事をおこなったそうだ。しかし、それは主要な道だけで、ここは森の中の道なので、全く舗装されておらず、小石だらけのガッタガタだ。
2頭立て4輪車だからかなり安定しているが竜車のスピードが早く、普通の馬車なら転倒しているだろう。
とはいえ、縦揺れがすごい。いかに現代の自動車や電車が揺れないか。これでもサスペンションが付いていて車輪は実はゴムタイヤで、結構衝撃が吸収されている。
でも時々「…ッおお」と驚くほど揺れる。
そう、この竜車はスキエンティアの技術が使われている。まだタイヤやバネを使ったサスペンションなどはまだ発明されていない。しかし、スキエンティアではすでに開発されている。さすがに長い時間揺れすぎ!って言いたくなるほどの揺れや、衝撃には耐えられなかったらしく、パンゲア商会の乗り物には科学技術を使うことになったそう。ちなみに一部の貴族にもサスペンション・ゴムタイヤ付きの馬車を売ったところ大好評だったので、高く販売している、と。
ここまでいったらわかるだろう。この竜車の御者、バンクさんはスキエンティアの研究者だった。 地形学(山や平野などの地形からその土地の歴史を調べる学問)を専門としていてその研究の移動がてら、パンゲア商会の竜車の御者をしている。
もちろん俺のことはメンデルさんから聞いていて、さっき俺をカウントしなかったのは俺を村人の前で数えるべきかどうか悩んだから。会ったことがなかった(正確にはメンデルさんがセルト村に帰った時に会ってはいる)ので俺のことはデリケートな問題だと思ったそうだ。俺を「若旦那」と呼ぶ優しい人で、かなり頭がよく、年は40才ぐらいの面白い人だ。
ここで竜車の客車について話しておこう。
客車は四角い箱型で、前に御者台、後ろに荷物を入れるスペースがあり、そこそこ大きい。俺達3人+1匹には十分な広さだ。椅子もふかふか(電車の中の椅子のような感じ)で結構いい。向かい合って座るのでマインと一緒にすわったり、ラコンと一緒に座ったり。
トルエノは出会った時よりかは竜の匂いにも慣れたが、ラコン+竜馬2頭でかなり嫌なようでマインの膝の上で雲の中に隠れて寝ている。
たまに食事(魔力供給)のため俺のところに来るがラコンとよくいる俺にも竜の匂いがついてしまったのか、男だからなのか、あまりくっついてこない。
やはり女好きなんだな、こいつは。
ラ「主~~ヒマでございますぅ~~」
ラコンがだるそうに言った。
ソ「……仕方がないだろう。移動中なんだし、ゲームでもしていたら?」
魔力で充電できるからどこでもできる。
ラ「こう揺れてますとゲームをすると酔うのでございます~何か面白いことはございませんか?」
……うーん。しりとりなんて旅のしょっぱなからしたら危険だし。
ケ「そうですねぇ……」
マ「私は景色を見ているよ! 竜車なんて滅多に乗ることがないからこのスピードのある景色、なかなか見れないよ!」
確かに。普通馬車だもんな。今回は日程の都合上、特別に竜車で送ってもらえるのだから。
ラ「とは言いましても………我はここらの景色なぞ見飽きておりますし……。あーあ、竜の時なら王都までひとっとびでございますのに。」
ラコンは退屈そうだ。
マ「そういえば、竜には戻れないの?」
ラ「できるにはできるのでございますが、やめておきます。実はあの「種族変更」という魔法は大変危険な魔法でして。失敗するとグチャグチャの肉の塊になってしまいます。」
ラ「うわぁ……」
ソ「その魔法は俺も調べたけど何回でもできるが、そもそも一回目、することも禁じられている。失敗率は50%、半々だ。ラコンはすごくラッキーだったんだよ。」
魔法書に載っていた。禁断魔法として。
ケ(え!)
ソ(いやこの前一緒に読んだよな?)
ケ(えーと………)
ラコンは驚いて
ラ「おぉ……危なかったのですか……」
知らずにしたんかい!
ソ「そうだ。今後はむやみにするんじゃないぞ?」
ラ「はーい。」
バンクさんが連絡用の窓から言った。
バ「すまねぇが、この先に大きな湖がある。もう馬達が疲れてきたからそこで休憩をとらせていただきやす」
ソ「了解です。」
よかった。マインたちも飽きてきたころだし、ずっと座りっぱなしで俺も疲れていたところだ。
「~~ッあぁ~~っ!!」
マインとラコンは竜車を降りると腕や足を伸ばして体をほぐした。
ラ「ここは何と言う湖なのでございますか?」
バンクさんは竜馬の綱を木にくくりながら、
バ「ここはサンウィー湖って言うんです。ちょっとした断層湖で、これでも深さは最大水深90mもあるんでごぜぇやす。中栄養湖で魚も結構いて……今日はやっていないようですが漁業がそれなりに盛んなんです。……っとちょっとしゃべりすぎやした。」
ソ「いいですよ。もっと教えてください。」
さすがスキエンティアの研究者だ。もっと面白いことを教えてくれるかもしれない。
バンクさんは嬉しそうに
バ「いいんですかい? なら話しやすが、この湖の流入河川は………」
マイン、ラコン、トルエノは話に興味がないようで、湖の周りを散歩しにいった。
ケ(ファ~ア。ちょっとおもしろいですけど。そんなにですか?)
ソ(シッ!俺は面白いの!)
バ「いやー、気持ちいい。若旦那がこんなにわかってくださるとは思いもしなかった。話すかいがあってすっきりしやした。ありがとうごぜぇやす。」
ソ「いえいえ。こちらこそ、勉強になりました。」
こういう人は普段話せないから話したがってるし、話を聞くだけでも喜んでもらえる。こっちもいい話が聞けてよかった。
バンクさんと話をしていると、マインが走ってきた。
マ「大変!ケイ! ソウタ!」
息を切らしていないのがすごい。
ソ「どうしたんだ?そんなにあわてて」
マ「向こうで精霊みたいなのがおそわれているの!」
ソケ「なんだって!」
するとバンクさんが、
バ「精霊……漁師から聞いたことがありやす、この辺りには水の精霊がいると。消滅するといけねぇ」
やはりいるのか、大きな湖だし。
ソ「マイン! 案内してくれ!」
マ「こっちよ!」
精霊学で学んだ。
精霊とは、例えば水の精霊ならその付近の水が持つ魔力が集まり生まれたものだ。水を守護し、崇めれば加護があり、疎めば水不足などの災いが起きる。
もし襲われて消滅したらこのあたりの水場に大きな影響が出る。
マインについて走っていくと、
マ「隠れて!」
マインの合図で近くの茂みに隠れた。
ソ「なるほど、あれが精霊か。」
湖面から水の溜まりがつき出て、人のような形をしている。
マ「ね! すごいよね!精霊なんて初めて見た!」
マインは興奮している。確かに精霊は珍しいけども、カグツチさんたちという神に3年間一緒にいたんですよ?あなたは。
精霊には元々形はなく、目の前にあるものの形をまねる。動物が相手ならその動物の姿に、人間なら人間に。
透明で分かりにくいが人の姿だから襲っているのは人か。
「射撃、開始!」
若い男の声と共に多くの矢が精霊に飛んでいく。精霊は湖の水を吸い出し、盾のように防ぐが何本かは体を突き抜けた。
ケ(ひどい 。 精霊が苦しんでいる………)
「はっは! やったぞ!」
手を挙げて喜ぶ若い男の姿が見えた。
あれは………
ソ「貴族か。」
ラ「そのようでございますね。服装を布を巻くことで隠そうとしておりますが、歩き方、話し方からすると育ちのよさそうな男のようでございます。」
ソ「フム………」
あの矢は対魔用……精霊にも多少のダメージがある。精霊には弱い魔法は効かない。部下を使い弓矢で倒そうとしているということは大した相手じゃない。
矢の数からして射手は20人ほどのようだ。
あの水の精霊はこのままだと消えてしまうだろう。しかし、相手は貴族、なぜここにいるのかわからないし、関わると面倒だ。トラブルは避けたい、何かいい方法はないだろうか………
『くそっ! ひでぇやつらだ!』
俺が悩んでいると、トルエノが叫んだ。
ソ「トルエノ?」
ト『わかんねぇのか? 精霊が苦しんでいるんだ!あの顔をみたらわかるだろ!』
……すまないが、遠いし透明だしよくわからない……
ト『ソウタ! お前はこれから世界を救うってんだろ! 目の前にいる精霊一人救えなくてどうするんだ!! ウジウジ考えているんじゃねぇ! 男ならスカッとやっつけてこい!!』
ソ「……そうだな。」
目の前に困っている人がいる。トラブルを避けたいという自分の都合を優先しては駄目だ。
「はっは! いいぞ!もっとやれ!射撃用意!!」
「発射!!!」
バチィッ!!
「……魔法障壁 堅牢の陣!!」
矢はすべて、俺が張った城壁のように堅く、白い障壁に刺さり、落ちた。
「!! なんだ貴様は!」
ソ「俺か? 俺は通りすがりの田舎者さ。」
ケ「精霊を殺すことは、許しません!!」
続く。
短めです。今まで長かったので。
来週も更新します!おそらく長くなります。
読んでくれたそこのあなた!ポイント評価をすると作者が喜ぶよ!As if my deviation value on a practice exam were good.





