五戒:C3(4)
魔法はどうやら難しいものらしい。
この国では魔法使用免許なるものがあるらしく、免許相応の魔法しか行使できない規定になっている。
それでも階級は十二しかない。十級から始まるが、これは魔法覚えた手の僕ですら取れる。なにせ、用意された魔方陣を発動するだけで、魔力をそこに注ぐだけの作業だからだ。
それが一級まで進むと、次に待ち構えるのが特攻魔法免許である。
召還、契約、封印などの高位の魔法になり、制御を効かせるのが難しいし、持続することも難しさの一つだとのこと。
一般人が止まるのは、この特攻魔法免許ではない。一番層が厚いのは四級。センスが無いものは大体ここで終わるらしい。
四級までの力は、まだまだサポート程度、剣に炎を纏わせる、風に乗るなどである。
特攻魔法免許を取得している人間は、たったの四人とのこと、が、驚くのはまだ早い。それより上がいるのだから。
特攻魔法免許の上にもう一つ、禁忌魔法使用許可免許というものが存在する。
悪魔や神獣の召還、血や魂の契約、記憶の封印、更にはオーパーツの発動、解明なども禁忌魔法に含まれる。
そして、魔法といえど攻撃だけでない、防御、回復などにも同じ階級が用意されている。
それでも、禁忌魔法使用免許保持者は、この国で一人だけである。
この国、いや、世界全体で火薬なるものの製造が禁止されている。
遠い昔の世界の決まりごと、守り続けるのは理由がある。それは、逆らえないからである。
世界で最もオーパーツの調査に力をいれ、国力、国土共に世界一位を築き上げる南の国が制定したものだからである。が、しかし、今となっては魔法でそれは補えるようになってきたため、火薬の調合などは、もはやそれ自体がオーパーツ扱いである。
では今はどうやって火器を用いているのかというと、仮想弾装空間に陣を敷き、弾を充填し、高出力発生陣を展開させ発射。
つまり、魔法さえ使えれば問題は無いのである。
グリップに手をかけ、銃に魔力を注ぎ込み、引き金を引くだけで全てが発動する。ただそれだけである。
魔法の使用に必要なのは、集中力とアイデンテティ、頭の中で陣を展開させ、それを現実に投影する。
魔法に使われている古代語などの究明は、何故人がいるの? と、同じような質問で無限後退せざるを得ないから、使えているからいいだろうという解釈だそうだ。僕も、使えない立場としては、難しいことを言われるよりはるかに簡単で助かる。
そんなこんなで二日軟禁されてます。太陽が見たい。
前衛向きではない。いや、前衛は十分すぎるし、普通の人間じゃ間に合わない。だから僕は後衛らしいです。
確かに肉弾戦を任せられても困る。運動なんててんで駄目。体は緩みっぱなし。魔法から入って正解だ。
ほぼ拷問に近い教育を受けながらも、自分は正しいのだと言い聞かせる。
「あ……」
少しだけ気になっていたことがある。
僕が武器を支給された昨日から、それは急激に動き始めていた。
武器のグリップ、刀の柄には、金字で“C3”の文字が怪しく煌く。
そして、それはロキさんの手入れしているライフルにも、レイさんの隣に無造作に置かれた野太刀にも書かれている。
案内書の裏表紙にも、金字で“C3”の字が書かれている。
「どうしました? 」
そんな僕の声を聞いてか、セムが覗き込むように笑顔を見せて質問した。
僕はあどけない子供の表情だったろうか、無邪気に質問をする。
「この“C3”ってなんですか? 」
「あぁ、それか、それは僕達のロゴだよ、なかなかだろ? 」
でも、このウィオーゴの名前はアイゼンヴォルグ、どこにも要素が含まれていない気がする。
「ふふ、アイゼンヴォルグを思い浮かべただろ、でもこれは違う。この街での、この国、ここの存在を知っているものの愛称さ。
“Crazy children of church ……教会の狂った子供たち”
僕達はそう呼ばれているんだよ」
その言葉に共感。とはいかなかった。無口ではあるが、狂ったとは少し言いすぎではと思っていた。
そして、このころの僕はまだまだ若かった。後になって思えば、それ以外の何者でもないと、この教会を見渡せるようになるのだ。