三十三戒:生は一生の苦しみにて、ひと時の安らぎを……(3)
ただいま〜、そして、開けましておめでとうございます。
「あの、これって何ですか? 」
異変に気づいたのはブレットで、教会の魔法陣が怪しく煌く、それはロキの使用している魔法人で、一縷の期待を皆に抱かせた。
当然答えは簡単だ。彼は生きている。神がどうなったかを、皆は知りたがっていた。殺し方は? 他の神は? と、半ば安心感を抱いていたが、それは即刻打ち消される結果になった。
陣が収束し、姿を現したロキの姿は慢心相違で、体中から血が溢れていた。が、それは怪我ではなく、病気のようであった。
体中のあらゆる皮膚という皮膚に、直径1cmほどのニキビのようなものができており、それが破れ、血が溢れている。
全員が呆気にとられているなか、セムはロキを抱きかかえ、その場に寝かせてやる。
そして、一滴の血を指にとり、レイに差し出す。
「解析をよろしく願う。ギン、治せるのは君だけだ」
驚きがギンの顔を埋めた。
「なんであんたがそのことを……」
「そんなのはいつでもいいだろ? 」
「知ってるなら尚更だ、俺には無理だ」
「大丈夫、レイを信じろ、ロキの血から病気を吸い出せ」
それはセムとギンの間の話であり、誰もその話にはついていけない。
何を言っているのか、何が起きようとしているのか、その全てが不明なだけで、ギンは自分のすべき行動を決めかねていた。
レイが血を解析し、神の力で弾き飛ばす行動を取ると、ようやく安心したのか、ギンが一歩ロキに近づく。
すると、徐にロキの首に歯をたて、血をすい始めた。
セム以外はその行動がわからず、恐怖しか出てこない様子で、ただただその光景を見守っていた。
ギンは数秒すると口を離した。しかし、その一瞬後のこと、ギンの全身が震えだし、悲鳴がとどろいたのだ。
「レイ、君の力でギンの中のロキの血を消すんだ」
レイの神の力、手のひらに一定以上乗せたもの、それと同じものを消し去る能力。だが、本人は使いたがらない、それは、この力がいかに残酷かをわかっているからだ。
意を決し、ギンの震える体に触れ、力を解放すると、ギンの震えが止まり、静寂が訪れる。
「二人が起きるまで、少し話をしようか……」
そこでやっと、ギンの話が始まった。
ギンの故郷は、西の国から植民地とされていた。そして、国で見つかったオーパーツの実験台になり、今の戦闘民族国家ができた。
つまり、ギンやギンの故郷の人間たちは、人間でありながら人間でない、オーパーツに侵食された生き物なのだ。だから寿命が一定で、人間に持ち得ない力を持っている。
ギン達の能力は、異性の血を吸うことにより、力を保てることと、全ての病気を遮断すること、が、ギンは長年血を飲まずに生きたことから、力が失われかけているのだ。
今回の行動は、ロキの中にある病原菌、またはそれを混ざった血を吸出し、病気をギンの体で無効化した後、レイの力でギンの中のロキの血を消し、一件落着だと思ったのだ。が、誰もわからないことが一つ、同姓の血を吸った場合、どうなってしまうのか、これは誰にもわからなかった。
「これが、私の知っているギンの情報だ」
「だからか、ここに来たと時私は、ギンに太刀打ちできなかったけど、今じゃ……」
レイが悲しそうに呟く、誰も何も言えない。言うべき言葉が見つからない。
そして、初めて知った仲間の秘密に、己の中に潜む秘密を照らし合わせ、自分の弱さを知るのであった。
「二人が目覚めなくとも、任務は実行する、明朝出発だ」
セムの声はいつもと違い、どこにもしっかりとした意思はなかった。