三十二戒:生は一生の苦しみにて、ひと時の安らぎを……(2)
今回の戦争は、中央突破を図り、一気に敵の本拠地まで侵入する算段である。
女王の動きは早く、南の国にも応援を要請し、最後に残った教会にも、今さっき連絡があったところだ。
今回教会の任務は、クルオルデルタの殲滅。
アイゼンヴォルグとは違い、個人団体だと思っていたのだが、先のポルメルワンの戦いで、戦場にクルオルデルタの二番手、フィルグがいたことが明白になり、支障をきたすものとして排除命令が下されたのだ。
蛇の道は蛇というが、この人数でどうしろというのだと考えたとき、自分が動くのを忘れていた。それと、ブレッドというなかなかに強い女性も加わり、人員は不足しているものの、力はほぼ互角だろうと思う。
「南の国からの援軍がおよそ五万、戦争への本格的な干渉はせず、南と北の敵を排除し、中央突破の手助けをしてもらうとのこと、我々の目的は一つ。クルオルデルタの破壊、つまり、トップのドゥレイを殺すこと。質問は? 」
ブレッドが勢いよく手を上げる。
「私は何を? 」
「そうだね〜、自由にが基本だったけど、群がる雑魚をよろしく。皆は幹部を、誰か、フィルグ倒したい人」
どうせレイが手を上げるのだろうと踏んでいると、思いも寄らぬところから手が上げられた。
「そうか、わかった。フィルグはラウ、君に任せるよ」
「南の国の援護を、ガブリエルとクヒトで、メーリクラウス殿はいかがなさいます? 」
女王が覗き込むように私の目を見る、どうかしたのかと聞き返すような目をしてみせると、女王はため息を一つ漏らす。
「最近おかしいじゃない、柄にも無く黄昏ちゃったりさ」
「正直気持ち悪いぜ」
「ガブリエルに言われる筋合いは無い」
確かに、心の支えはある。
忘れようとして、忘れられなくて。果たそうとして、果たせなくて。中途半端な私に見出された一つの道に、進めばやっと何かがしっかりと終わりを告げる。
が、今それに向かってしまえば、また途中で投げ出すことになる。そんなジレンマに、深くはまってしまったようで、なかなか抜け出せないのだ。
「ほらまた。まぁいいよ、どうせあんたはあたしの護衛だ。よろしく」
「ルグルさ〜ん。また三席に撒かれちゃいました」
「二席は異常なし。こっちに合流しろ」
第二権力殺人事件。第三権力の一部、第二権力の上層部、第一権力。という、極わずかな人間しか知らないこの事件、つい最近もまた、四席が殺された。
手口は同じで、何か強力な魔法か何かで、顔を打ち抜き即死。首から上が無い状態で五席も、四席も発見された。
外の世界と唯一通じている二席が証言をし、一席は姿を見せず、三席も軍の追跡をかるくあしらってしまっている。張り込みすら出来ない状況に、今出来る一番間抜けな二席を張り込み中。
「一席やはり動きなし。見張りがばれてますね」
「エマもこっちに合流してくれ」
見張りは簡単で、二席も気づいていない様子だった。
家を囲むように三人を配置し、玄関、裏口、窓を監視。つまんない。
なので、事件をまとめて見ることにする。
殺されたのはどれも第二権力五賢老員で、四席の人とは俺も面識があるので、そうだと言える。
しかし、公にもされておらず、第二権力の末端は知らないような闇の組織の人間を殺せるものといえば、それなりに権力の高いもの。
推理というものをやってみれば、あの女王が一番怪しいが、あの女王も第二権力に殺されかけたんだ。自業自得でいいと思うし、この事件の捜査依頼者が女王なわけで、とどのつまりわかりません。
「目標の家に接近する人影を発見」
「エマ、目を離すなよ」
足早に進み、二席の家へと侵入、二席も受け入れている様子だ。それが窓から伺える。
「目標に接近。発砲用意完了」
顔は確認できない。黒い外套で身を纏い、全身を覆い隠してしまっている。
「ラグロス、目標の家に接近だ」
これが、悲劇の始まりだった。
「目標殺されました!! 」
「エマ、放て! ラグロス進入だ。外は任せろ! 」
PCが壊れました。
当分更新できないので、今回はPSPからの更新です。
どれだけかかるかわかりませんが、少々休まさせていただきます。
漁火。