7 寝顔。そして、妹は無邪気な笑顔を見せました。
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昨日の分を投稿します。
遅くなってしまい、申し訳ございません!
『おやすみ、レイ』
ベッドで横になっているレイの頭をユウはそっと撫でる。
「……ぉにいちゃん、いかないで……」
ユウが外へ出て行こうとしたタイミングで、レイは寝言を呟く。
夢の世界でも甘えん坊な妹にユウは苦笑してしまう。
ユウとしては早く兄離れしてくれると安心できるというものだが、実際のところ妹離れ出来ていないのはユウも同じだ。
(はいはい……最近は成長した姿をよく見るから、すっかりお姉さんになったんだなぁと思ってたけど、やっぱり寝顔は昔と全然変わらないね。ふふ、この寝顔にどんだけ救われたことか……)
「おにいちゃんっ、いっしょに……いっしょにねるのぉ……」
レイの寝言はとことん甘えてくる。
ユウはまた寝言かな? っといった表情を見せるも、次の瞬間にはレイの隣に添い寝していた。
これはユウが甘いわけではなく、レイの強制命令が何故か発動したからだ。
『あはは……僕は寝る必要がないんだけどなぁ……』
結局、ユウはそのままレイが目覚めるまで添い寝することになったのであった。
添い寝するユウを見て、ミカは「何で恋人の、私のところに来ないのよ!」っと怒ったのは最早ご愛嬌だと言えるだろう。
***
ユウたちが目指しているのは『糸』の都市フィーロだ。
もうお分かりだろうが、この都市は『糸』の生産、また織物工業が盛んだ。
数多くの服屋が存在し、世界の【着飾り師】もたくさん訪れる都市である。
「うぅ……ダメみたい」
『ありがとう、ミカ』
ユウたちは現在、フィーロまで行く馬車を探しているのだが難航していた。
ユウたちが聞くところによると、村の馬車は大方がフィーロへ出払ってしまっているのだと言う。
「困ったわねぇ……如何する? ユウ」
『うーん、ひとまず宿屋の人にも行けそうな御者の方がいないか聞いてみよう』
「そうね」
ユウとミカが話し合ってる中、レイはつまらなそうにユウタンで人形遊びをしていた。
そんな時だった。
「あ、あのっ! も、もしかして、馬車をお探しですか?」
「そうです! 今、フィーロへ向かう馬車を探しているのだけど、中々見つからなくて……」
「そうだったんですね! あの、私で宜しければフィーロまでお送りしましょうか?」
ミカに話しかけてきたのはレイより少し年上くらいの少女だった。
如何やら、この少女は御者の人らしい。
「私はスレンダ=リードです。スレンダと呼んで下さい! 新人御者ですがどうぞ、よ、よろしくお願いします!」
スレンダは緊張からか、それとも元々の性格なのか、声を上ずらせながら挨拶をする。
「そんな畏まらないでくださいね。私はミカ=エールです。そっちの小さいのがレイ=ハーデス。こちらこそお願いします、スレンダさんっ」
「あ、ありがとうございますっ……あの、そちらの男性の方は……」
ミカの隣でやり取りを見ていたユウは突然、自分のことを指摘されて動揺する。
動揺したのはユウだけではなく、ミカも驚いているようだ。
レイはというと、ミカの紹介の仕方が気に入らなかったのか、プンスカしている。
「スレンダさんっ! あなた、ユウのことが見えるの!?」
「ゆ、ユウ? そちらの男性の方のことですか? はい、見えますよ?」
自分たちにしか見えないと思っていたミカは、見れる人が他にもいるという事実にややテンションが高くなっているようだ。
ユウもユウで嬉しいことには変わりないらしく、笑顔を浮かべている。
「お兄ちゃんは幽霊なのに、見えるなんてすごいね。お姉さん」
「え? ゆ、幽霊? ……(バタリッ)」
「す、スレンダさんっ!? しっかりして、スレンダさん!」
スレンダは緊張マックスだったところに、ユウが幽霊だと言う衝撃の事実を突きつけられ、倒れてしまう。
ミカはスレンダを受け止め、意識を戻そうと呼びかける。
そしてしばらくしてから、スレンダは無事に現実に帰ってきてくれたようだ。
「ご、ごめんなさいっ! あ、あのスレンダ=リードです! ゆ、幽霊さん……じゃなくて、ユウさん。よろしくお願いしますっ!」
『こちらこそ、驚かせてしまって申し訳ないです。ユウ=ハーデスです。ユウと呼んで下さい。フィーロまでよろしくお願いしますね、スレンダさん』
「しゃ、喋った!? ……(バタリッ)」
「スレンダさん!? しっかりっ!」
「お姉さん、面白い」
さっきまでの、つまらなそうな表情とは違って今は新しいオモチャを手に入れた子供のように無邪気な笑顔と、妙な恐ろしさを醸し出すレイ。
果たして彼らは無事フィーロに辿り着けるのか……。