13 馬車は進む。そして、妹は抱き締めます。
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馬車は軽快に、風に乗るように走り続けている。
道沿いに生い茂る木々はザワザワと音を立てている。
森は静かではなかった。
当然、馬車の中も静かではなかった。
「全然わかってないわねっ。女は中身よ!」
「ふっ」
「ん? なによ。言いたいことがあるなら言ってみなさいよ!」
やっぱり、騒がしいのはこのレイとミカだ。
如何やら女の魅力について言い争っているらしい。
「かわいい女の子はオシャレから始まるの。それを怠るということは、女の子として罪」
「まって、百歩譲ってオシャレが大切だとしても、そのファッションはどうかと思うわっ」
「何? このドレスはかわいいを追求した究極のファッションなの。それが分からないなら、ミカさんはそこまでの人間」
「な、なんですって? 言わせておけば、このフリフリおチビ!」
「ガミガミおばさん!」
いーっと互いに、にらみ合うレイとミカ。
いつも通りといったらいつも通りなのだが……この二人ある意味仲がいいのか、悪いのか。
そんな風景を眺めている人物もまた変わらないようだ。
「ケンカはよくないよね、ユウタン?」
レイから預かっているクマの人形ユウタンを、ユウは自身の頭に乗せて話しかける。
もちろん、主のそばを離れたユウタンに喋る力はない。だって人形だもの。
「うんうん、そうだよね。僕もそう思うよ!」
以外にもユウは人形遊びが好きだったようで、喋ることのないユウタンと楽し気に会話(?)をして遊んでいる。
そんな子供っぽいユウの姿を見逃すほど、このレイとミカは愚かではない。
((か、かわいいぃーー!!!!))
ユウの意外な一面を目にした二人はケンカも忘れて身悶えている。
レイとミカにとってユウはアイドルのような存在に近いと言えるだろう。
かっこいい姿も、かわいい姿も、どれもご褒美なのだ。
しかし、もう一人ユウの姿を目にして悶えている者がいた。
御者台から振り返っては前を向き、振り返っては前を向く。
そんなことを繰り返しているのは、お察しの通りスレンダである。
(やだっ、ユウさんかわいい。何なのこの胸の高鳴りは!? 普段はあんなにも真面目で、頼り甲斐のあるユウさんが……これがギャップ萌えってやつなの?)
スレンダは自身に訪れた心の変化に気が付くも、それが何なのか分からないようだ。
確かに、まだそれは小さな小さな変化であって決めつけるには早いだろう。
今はその胸のドキドキを大切にして欲しいものだ。
『そう言えば、何だか森の方が騒がしいような……』
「森?」
ユウの呟きにすかさず問いを投げかけるミカ。
『うん。もしかして――「モンスターです! 急停止するので、壁につかまって下さいっ!」……了解です!』
スレンダは遠くに見えるモンスターの影を捉え、馬車を急停止させる大勢に入る。
御者台の右端に取り付けられているレバーをスレンダは掴むと、前方から後ろへと切り替える。
「止まれぇええ!!」
両手で掴み直し、力いっぱいにスレンダはレバーを引く。
「うぅりゃぁああああ!!!!」
スレンダは声を張り上げているものの、その手は緩むことなく後ろに引き続けている。
その甲斐もあり、馬車の速度は徐々に減速し始める。
ストロングもそれに合わせるように減速している。
“キィー”という音を響かせながら馬車は完全に停止する。
反動で馬車に乗る全員は前に体勢が崩れてしまう。
「うやぁ」
ミカは反動に耐えられず、前に伏せる形で手をつく。
「おっとっと」
『大丈夫?』
「ありがとう、お兄ちゃん……ふふふ」
レイもミカと同じように前に倒れそうになるが、ユウが体を支えることでそれは免れた。
形的にはユウにレイが抱きついているような体勢なため、レイの表情はとても満たされたような顔をしている。
そして離れるのかと思いきや、そこはレイ・クオリティー。
ユウの背中に回している腕を、さらに深く伸ばしてレイはユウを抱き締める。
ぎゅーっと抱き締められたユウは驚きはするも、抵抗はしないようだ。
「ちょ、ちょ、ちょぉおお!!」
ミカが唸る。
それはもう、牙を剥いたライオンのように恐ろしい顔をしてだ。
本当のモンスターはもしかして、ミカだったのか?
そんな茶番はひとまず置いておこう。
『モンスターだ! 二人はここで待ってて』
「お兄ちゃん、レイも行きたい。冒険者になりたいから」
ユウを説得するには、あまりにも効果的な言葉だ。
レイを連れて行かないということは、つまりレイの夢を否定することになってしまう。
ユウとしては危険だと分かっているところに、レイを連れては行きたくないだろう。
一拍ほど間を置いてから、ユウは口を開く。
『うん、分かった。でも、モンスターは危険だ。レイ、僕から離れてはダメだよ?』
「うんっ。ありがとう、お兄ちゃん」
「わ、私も! 私も連れて行って」
ユウの許しを得たレイは花を咲かせたような笑顔を見せる。
そんな中、対抗心なのか嫉妬心なのか、どういった動機かは分からないがミカも参加の意を示す。
『うんっ、いいよ!』
「あれ?」
『どうしたの、ミカ?』
「い、いや。思っていたのと、ちょっと違っただけ」
『うん? そっか』
ミカはあっさりと許しを得たことに、逆に納得がいっていないようだ。
ユウはそんなミカの心情に気がつけていないようだが、仕方ない。
これぞ、ユウ・クオリティー。ミカ・クオリティーだ。
『行こう!』




