11 妹らは出発します。
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「皆さんっ、出発します!」
スレンダは後ろを向き、馬車に乗っているユウたちに声をかける。
溌剌とした声が馬車に響く。
ユウたちが出会った頃とは大違いな変化だ。
『はい!』
「わかったわ!』
「うん」
ユウたちもそれぞれ返事をする。
そして、スレンダは再び前を向くと手綱を取ってストロングに指示を出す。
「ストロング! 行くよっ!!」
「ヒヒィインっ!!」
ストロングは前足を軽く上げると、景気よく走り出す。
徐々にその速度は上がり、数分後には『地球』でいう車に近い速さに変わっていた。
後方にあるステシオン村が小さく見える。
「速いっ!?」
『これはすごいね。想像以上だ!』
「……半魔馬ステキ!」
ミカはあまりの速さに驚きを隠せないでいる。
ユウはというと、窓から顔を出して風を感じながらその速さに興奮しているようだ。
レイは……見ての通りだ。目がキラキラしてますね。ものすごくね。
ストロングを走らせてしばらくした頃、車内は妙に騒がしかった。
「かんいすてーたすひょうじ?」
『そうだよ、ミカ。この能力を僕は《簡易ステータス表示》って呼んでる』
「お兄ちゃん、どんな能力なの?」
《簡易ステータス表示》とはその名の通り、簡易的にステータスを表示する能力のことだ。
そもそもステータスというのは個人の情報――名前、性別、年齢など――や、個人の身体的、精神的、魔法的などの能力を数値化したものを指す。
しかし、この《簡易ステータス表示》は“簡易”と付くように全てを表示できるわけではない。
表示できるのは対象の『天職』、『能力』……ここまでは(名前、性別などは無理だが)いい。
だが、個人の身体的、精神的、魔法的などの能力を数値化する項目が選べない。そこが難点だ。
例えば……
「お兄ちゃん、レイはどんなステータス?」
『うん。じゃぁ、実際に使って説明してみようか』
ユウが《簡易ステータス表示》を使う。
――――
天職 【死霊使い】
能力 《死霊魔法》《うるうるな瞳》
魔力 [2000]
キュート [10,000]
忍耐 [100]
妹属性 [50,000]
相加平均 [18,025]
――――
『な、なるほど』
「お兄ちゃん、どう?」
天職、能力は見ての通りだと言える。《うるうるな瞳》は割愛させて頂きます。
次に気になるのは表示されている項目だと思われるが、全ての項目に共通して言えるのが一般平均値は[1,000]だということだ。
この値を基準とすると……おかしな点がいくつもあるがむしろ、まだこのくらいで済んでよかったと思いたい。
スペックは個人の総合能力値のようなものだと考えていいだろう。
必ずしもこの数値が絶対とは言えないが。
「レイ、強い?」
『そうだね。スペックから見ると、一流冒険者に近い力だと思うよ。魔力も一般の倍はある』
「やった……うふふ」
レイは見るからにご機嫌のご様子だ。
ユウタンで顔を隠したり、ユウタンに自身を褒めさせたりなどしている。
更には「レイは最強の冒険者」とかなんとか言っている。まだ、冒険者ではないぞー、レイさん。
しかし、スペックの値は一般的なものより高いのは事実。
まだまだ成長途中のレイはこれから更に強くなるだろう。
「ふーん。ねぇ、ユウ。私は見れないの?」
『ん? そんなことないよ。ちょっと待っててね』
ユウがミカに対し《簡易ステータス表示》を使う。
――――
天職
能力
魔力 [1,600]
パワー [3,000]
ツッコミ [10,000]
乙女 [40,000]
相加平均 [13,650]
――――
『み、ミカも強いね……』
「え、本当に?」
『うん。魔力は平均以上だし、スペックも一万越えだよ』
ツッコミ、乙女の項目はさておき、魔力やスペックは人並みを超えているのが見て分かる。
更に、パワーの項目は筋肉とは関係ない純粋な力を意味するため、この項目が高いことは物理的な強さに直結する。
「そういえば、私の天職はどう?」
『それが、まだ覚醒していないみたいなんだ』
「そう……」
ミカはその表情に、明らかに落胆の色を見せてしまう。
そんなミカに、ユウは優しく慰めの言葉をかける。
ミカが天職に覚醒していないのは特段問題はないことで、実際のところ天職に目覚めない者も世界にはたくさんいる。
そもそも、天職とはその者の一つの素質といった意味合いが強く、目覚めたからといってそれが全てというわけではない。天職とは真逆の職種に行き着く者もいる。
「ユウはどんなステータスなの?」
「レイも知りたい」
『ぼ、僕? いいけど……』
――――
天職 【村人】
能力 《弱チート》《タフネス》
魔力 [1,000]
聡明 [1,400]
疑心 [200]
霊力 [10,000]
相加平均 [3,150]
――――
因みに天職の【村人】とは十人に一人が覚醒するほど、ありふれた職業だ。
《タフネス》は【村人】が取得できる能力の一つで、要は疲れ知らず的なやつだと思っていい。(もちろん、疲労はする)
「う、うん! いいと思うよ? 分からないけど……」
「お兄ちゃん、レイが一生守るから安心して」
『そんな目で見ないでくれぇ。二人が強すぎるんだよ……』
ユウの嘆きが車内に響く。
今のユウにとって、慰めの言葉はむしろトドメになってしまう。




