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10 彼女は涙を勇気に変えます。

 アクセス、ブックマークして頂きありがとうございます!!

『そしてこのことは、スレンダさん。あなた自身の話にも繋がってきます』


 ユウは真剣に、真摯に言葉を届ける。

 対するスレンダもユウをしっかりとその瞳に捉えている。


『率直に聞きます。スレンダさんはストロングのことを避けていますね?』


「そ、それは……そうかもしれません……私はストロングが分からない。幼い頃からずっとストロングのことは見てきました。お世話も沢山してきました」


 スレンダは少し俯きながら話す。

 その声からは“悲しみ”が感じ取れる。


「私は無意識のうちにストロングと距離をとって、壁をつくってしまっていたんですね」


「スレンダさん……」


『スレンダさん。悔やんでもダメです。それでは前と変わらない。ストロングは見えているんです。あなたの心が悲しみ、苦しみ、自信をなくしてしまっているということが』


「自信……」


 ユウの言葉がスレンダの心の中へと踏み込み、ドアを叩く。

 部屋こころの中は暗く狭い。

 その中で女の子スレンダが足を抱え、うずくまり泣いている。


「やっぱりダメなんです! 私には、わたしには……」


 そんな時だ、レイは背中にかけている長い杖を手に取り掲げる。

 そう、あの世界最強の【死霊使いネクロマンサー】のように。


「泣いてちゃダメ。レイも泣いちゃうときはあるけど、それでもお兄ちゃんのためなら頑張れる。お兄ちゃんのためなら諦めない!」


 レイの目は真剣だ。

 全てが本当に想っていることだと、誰だってわかる。

 レイは詠う。


『冥界に眠りし魂へ願う。我、死者の声を届ける者なり。冥界の門は開かれる。その遺志おもい、今こそ我の下に集いて、示し給え!』


 英雄が詠った詠唱ことば。だが、今だけはレイの詠唱ことばだ。

 杖の先が青紫色に光り出す。

 【死霊使い】としての能力、《死霊魔法》だ。


 光がおさまるとレイが呼び出した魂が現れる。

 そして人魂は喋り出す。


『スレンダ』


「お父さんっ!」


 レイが召喚した魂はスレンダの父だった。

 スレンダは予想外な人魂(ちち)の呼びかけに驚きを隠せないでいる。


『何だ、その顔は。死んだ人間が化けて出たようなって、その通りか! はははっ』


「本当にお父さんだ……」


 父の冗談に、スレンダは本当に父が人魂となって現れたということを確信する。

 そして、スレンダはまた思わず泣いてしまう。


『おっと、そう言えば時間があまりなかったんだったな。スレンダっ!』


「は、はいっ!」


 スレンダの父はさっきまでのふざけた雰囲気を一変し、真剣な声色でスレンダを呼ぶ。

 そんな父の声にスレンダはビクッと背筋を伸ばす。

 スレンダが小さい頃、怒られるときに決まってこの声色で呼ばれていたからだ。


『一回しか話さないから、よく聞くんだぞ』


 スレンダの父は途端、優しい声に変えて喋り出す。

 何故なら怒るわけではないからだ。

 これが最後の父と子の会話になってしまうからだ。


『俺は情けないことに、この歳でお前たちを残してあの世に行ってしまった。本当に申し訳ないと思っている』


「そんなことっ!」


『あぁ、お前は優しい子だ。だから、人よりも責任を感じてしまう。そして、出来ない自分が情けなくなって、自信をなくしてしまう。でもな、スレンダ』


 スレンダは溢れそうな涙を必死に堪え、父の最後の言葉を聞き逃さぬよう前を向く。


『お前は真に強い子だ! 人よりも何倍も努力できる子だ! 人の気持ちがわかる本当に優しい子だ……辛いときは泣いてもいい。でも、諦めるなっ! 前を向け! 胸を張れ! お前なら出来る。自信をもて……俺の自慢の愛娘よ』


「ぅう、うっ……ぐすっ…………うん! わだし、がんばるよ。だから、ずっどみててね……おとぅさん」


『あぁ! みんなをよろしく頼むっ! じゃあな、スレンダ……』


 スレンダの父は最後にそう言い遺すと、青い人魂は白い光の粒子に変わって天に昇るように空へと消え去っていく。

 スレンダはもう泣いてはいなかった。

 涙は勇気に変わり、スレンダの背中を押してくれる。


 スレンダを阻むものは、もう何もない。

 ストロングはスレンダを見ている。見定めている。

 自身の主人として相応しいかどうか。


「ストロング! もう、私は下を向かない! だから――私に力を貸しなさいっ!」


 スレンダは力強く言い放つ。

 自信のなかった先程までのスレンダとは違う。

 それはストロングにも分かっていた。

 その想いは伝わっていた。


「ヒヒィーーンっ!!」


 ストロングは前足を掲げて鳴く。

 言葉は分からなくてもそれが認めたという意味だと、この場にいるものは全員理解していた。


 ここに、新たな【馬車使い(キャラバンスター)】が生まれた。

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