人?の話は聴きましょう
真っ白でどこまで続いているのか判らない、そんな世界
そこで『私』は目を覚ました
ホーム画面設定を後回しにしたのがいけなかったのかそんな無機質な『世界』が初のVR経験の場になってしまった
少し寂しくは思うが仕方ない、手足が自由に動かせることに喜びを感じながらこの世界を走り回ってみる
昔から心臓が弱かった私は体を思う存分動かすことができなかった
そんな折に心友がこのゲーム『アソートオンライン』の情報を持って来てくれたのだ
こういう仮想現実は医療とかそういう場所にこそ必要な気がしてならないが、どうも遊びにかける情熱の方がはるかにすごかったらしい
これを無事手に入れられたのも親友のおかげである
長期休暇を利用して数日前から店頭に並んで私の分まで買って来てくれたのだから感謝をしてもしきれないというものだ
そして今日が待ちに待った配信日これから心友と一緒に『アソートオンライン』を遊びつくそうと思っている
心友はいわゆるマッタリ系らしいし現実で出来ないことをこの世界で思う存分楽しもうと昨日二人でワイワイと話し合ったものである
っといけない、自由に動けることが楽しくてついホーム画面で遊びすぎてしまった
さっそくアプリを開いてゲームの世界にダイブしなきゃ
人差し指と親指をくっつけてから離す動作をすると半透明のウィンドウがでるからここにある『アソートオンライン』をタップしてっと
『ガガッガガガッガ』
なにやら可笑しな音とともに一瞬視界が暗転したが視界が回復すると目の前にHPで見た王都を見下ろす形で上空に浮かぶように立っていた
『現実』と遜色ないその光景に歓喜の声を我慢できずに漏らしていると目の前に白い光の球体が現れた
「ようこそ、開拓者様。私はあなた様をサポートするために参りました『妖精』のルーレリカ・ディフォンと申します。よろしくお願いしますね」
「え、はい、よろしくです」
その妖精?に話しかけられうろたえる彼女だがそれを知ってか知らずか、妖精はそのまま話を進めていく
「それでは初めにこの世界での開拓者様の活動する体を形成いたしましょう。開拓者様の血筋はすでに決まっていらっしゃるようなので肉体を形成たしましょう」
「え、血筋って、種族?そんなの決めた覚えないよ!?」
「そう申されましても血筋を変えるなど『生と死を司る女神様』でもない限りできませんよ」
ゲームとはこうも一方的に何かを決められるものなのだろうか
おろおろとする妖精さんがかわいそうに見えてきたので溜息一つ吐き話を進めてしまう
「えっと、ではこちらに開拓者様の血筋から仮で肉体を作成いたしますので変更点がございましたら申してください」
髪に隠れるようにして生える三角形のとがった耳にモフモフの尻尾のついた現実世界の自分がそこに『裸』の状態で現れた
そのことに顔を赤くしながら抗議をするがこのほうが判り易いだろうと妖精に言われてしまい確かに一理あるため恥ずかしいがそこから調整していくことにした
狼の混じったような見た目なのだからと髪を白く染め目を黄色っぽく変更してみる
次にその細すぎる肉体を少し肉付よく変更した
最後にそのたわわに実った胸に変更をかけようとしたがどうも変更できない
「あれ?胸が小さくできないんだけどなんで?」
「そんな、胸を小さくなんて私が許しません。大きくして誇張するならまだしも小さくするなど…」
なんだか妖精さんが異様な気配を漂わせながら迫ってくるため胸が大きいのも大変なんだけどなと思いつつもそれを声に出すことなく別の項目に目を向けることにした
鋭い目つきになっている目を緩和し、腰にまで届く髪を動きやすく肩で切り揃える
そうして出来た綺麗処の周りをクルクルしながら確認し満足した主を妖精さんに告げる
すると妖精さんが自分を掴んだと思うとそのままその体に押し込まれるように入れられる
とたん感じる鼓動と体の重さ、風の感覚に驚きながら妖精さんの方を向くと点滅しながら嬉しそうに飛んでいる
「これで貴方様も晴れて開拓者の仲間入りでございます。早速神々より承りし力、『スキル』を授けたいと思います」
「え?神々の力なのに妖精さんが授けられるの」
「はい、私たち妖精は神々の恩恵を受けこの世に生を受けましたので、神々の了承さえもらえていればその力の少しを授けることが可能なのですよ」
妖精さんが少し偉大に見えるが、目の前に現れたスキル群から早速スキルを選ぼうと指を動かしていく
「残念ながら今の私は5つの『スキル』しか授けることができませんので慎重に選んでくださいね。あなた様の様な獣人は…」
なにやら妖精さんがツラツラと言葉を話していた気もするがとりあえずファンタジーといえば『魔法』である
ずらりと並ぶスキル群。その中から魔法らしきものをピックアップしていく
『火魔法』『水魔法』『風魔法』…続々と出るわ出るわ、とても絞れそうにない
だが彼女は魔法のほかに現実世界で出来なかった運動関係のスキルも欲しいのである
『体術』『走行』『飛躍』…運動関係だけでもその数は計り知れないのである
そもそもこのスクロールに終わりが見えない
スキルを横にスクロールして別枠に持っていけたからよかったがこれがなかったらまたそのスキルの元まで戻れるかわかったものではない
そもそも『お話』『座る』『寝る』『歩く』…これらまでスキルに含む理由はあるのだろうか
あ、このスキル面白そう…
「…あの?聞いてらっしゃいますか?結構大事なことも話したと思うのですが、もし?もしもし?」
「え、スキルは5つまで選んでいいんだよね」
「そうですけど、ほんっとうに前半しか聞いてないじゃないですか!私は…え、確定しました?このやり取り中に確定するとは思いませんでしたよ!?」
スキル選択に夢中になりすぎるあまり妖精さんの話を聞流していたらしい
いくら楽しみだったとはいえこれはいただけないと謝りはしたがどうも妖精さんの気分は最悪らしい
そっぽを向いて不機嫌な空気を漂わせている
「せっかく説明していましたのに、もうどうなっても知らないんだから。さっさと、いっちゃえー」
「え、ちょ…」
どうしようかと思考していた彼女だが妖精が突如こちらを向いたとおもった瞬間には視界が白く染められ眩しさのあまり閉じていた目を開けたころには噴水を背にレンガ造りの街並みに飛ばされていたのだった
「あ、ついやってしまいましたがまだ説明が…あぁどうしよう」
あのあと妖精が慌てふためいていたのは別のお話である
『桜花』
血筋?:-
スキル
『?』『?』『?』『?』『?』
称号
『ロストブラッド』