……目が覚めて……
ふと意識が戻り、周りを見渡してみると、美しい花が咲き乱れ、青々とした木々が生えた山々が遠くの方に見渡せる、小高い丘に投げ出されていた。
「……ここ、何処だよ……」
辺りをキョロキョロと見渡してみてすも、人らしき気配は全然感じない。
不安と焦りが募る中、急に目の前が光輝きだし、その光の中から、先程の外套の奴が出てきた。
「お待たせぇ~、ちょっと遅れちゃったかなぁ~?」
目の前に現れた、ソイツは、鼻にかかった甘えた様な声を出しながら、ヒョイと光の中から飛び出した。
「あー、ちょっと説明しないと駄目かなぁ~?言葉わかるよねぇ~?」
そう言ってきたソイツが、徐に外套を脱ぎだし地面に放り投げたと思ったら、その外套が膨らんだかと思うと、大きく広がり、テントもしくはゲル?のような物に変わった。
呆然とその様子を見ていると、ソイツから、声がかかり。
「呆けてないでぇ~、入るよぅ~」
ハッとして、ソイツの方を見てみると、艶やかな黒髪のロングに、スレンダーなのにも関わらず、白い作務衣の様な服の上からも、ハッキリと分かる強調された胸と、作務衣なのに下は、スリットの入ったスカートの裾から見えるスラッと伸びた脚が見える。
「ほらぁ~、そんなエロい目で見てないでぇ~、入る入るぅ~」
そんな事を、言われながらテントへと、押し出すように先を促してきた。
押されているので、転ぶようにテントの中に入ってみると、そこはまさに普通の家のような様子だった。
家具が、下品にならないように整然と並んだホール、その先へ行くと、暖炉がありシックに纏められた
リビングだった。
「まあぁ~、そこに、掛けてぇ~」
高級そうな、黒い革製のソファーに腰掛けて、ソイツは、向かいのソファーを指差した。
促されたそのソファーに、座りながら、これから何を聞かされるのかと、内心脅えながらも虚勢を張りつつ席につく。
「えっとぉ~、まず、何処から話せばいいかなぁ~?」
最初から全部話してほしいと、思いながらも、取り合えず、ここが何処か聞きたかったので、それから聞いてみた。
「ここはねぇ~、君達が言うところの、天国?みたいなところかなぁ~」
そんな事を、平然と髪をいじり斜めを見ながら、喋った。
俺は、死んだのか…そんな事を、朧気に考えながら、愕然としてると、続けてこんな事を呟き始め。
「呆けてるところ悪いんだけどぉ~、これから、私の世界に転生してもらうからぁ~」
「……は?……」
突然言われたその一言に、またもや呆然としてしまって、何を言われてるのか分からない。
「えっとねぇ~、あの世界で貴方は、心臓を抉り出されたのは、わかるよねぇ~?」
「それでねぇ~、あの世界で君は、死んだことになってるのよぉ~」
死んだことになってると言われて、俺は、一気にあの時の事を、まるで追体験してるかの様に、思い出していた。
「まぁ~、心臓が無い死体なんてぇ~、死んでるとしか思われないでしょ~」
「それでぇ~、ここに来てるんだからぁ~」
「……あの、自分はこれから、どうなるのでしょう?」
ここで、目が覚めた時から、若干は気付いていたが、言われてハッキリと死んだ事を確信した俺は、この先どうなるかが、不安でたまらない。
「だからぁ~、私が管理している世界にぃ~、行ってもらうからぁ~」
これは、俺が好んで読んでいたラノベの展開か?等と、若干期待を胸に先を聞きたくて、少し興奮していた。
「私としてもぉ~、あの展開はぁ~、イレギュラーだったんだよねぇ~」
「まあぁ~、しょうがないからぁ~、転生してもらう事にぃ~、したのぉ~」
よし、キタコレ!と、心の中で思いながら、チートとかあるのかとか、色々考えていると、声がかかり。
「まあぁ~、このままじゃ~、何も分からないと思うからぁ~、簡単に説明するとぉ~、剣と魔法と魔物の世界だからぁ~」
おお、やはりテンプレ!これで、俺も異世界主人公と思いながら、妄想の世界に飛んでいると。
「そんな訳でぇ~、これからぁ~、、その世界に行ってもらうからぁ~」
そう言われた瞬間、俺の体が光りだし、またもや、意識が薄れていった。
「……いかなりかよ……」
かすれる様に、呟き、まだ能力だとか、お金だとか、装備なんかは…と思いながら、薄れいく意識の中で、ソイツが、薄く口元に笑みを携えているのを、目の端で捉えながら、俺は意識を完全に失った。