08.不意な追い打ち
「な....」
ソレは父さんの鞄から出て、いきなり怒鳴りつけた。
『遅い!待ちくたびれたじゃない!』
人型で上下緑色の服を纏い、羽根を生やしてふわふわ飛んでいる。
こ、こいつは....
「ティンカーべ『違うわよ』
俺の話を遮りそいつは、腕を組んで俺を見下ろす。
「なんでも、いい....水をください....」
限界を越えそうだった。もう一声も出せない。
『水?鞄の中に入ってない?』
えっ
手探りで鞄の中を探すと、ペットボトルのようなものがある。
ラベルには”天然水”と書いてあった。
ほ、本当に水だ....助かった....でも何でこんなもん入ってんだよ。
とりあえず鞄の水を飲み、正気を取り戻した俺にティンカー◯ルが話しかけてきた。
『あらためて〜初めましてカイト。私の名前はアラビ。代々王族を護る”サポート妖精”よ』
「サポート妖精?」
『そ。貴方達を裏から手助けするの。私達はその為に造られたのよ』
妖精は何か誇らしげに胸をポンと叩いた。
「言ってる事はよく分からないんだけど....俺の助けになってくれるって言うんなら、帰り道教えてくんない?」
落ち着いた俺は砂漠の上に座り直した。
水はもうない、ここに居てはまた同じ事の繰り返しだ。次は本当に死ぬ。
一刻も早く帰るべきだと思った。
この時の俺は焦りと不安に支配されていた。
帰りたい、帰りたい。
怖かった。ただそれだけだった。
妖精は驚いたように俺の顔を見た。
そしてしばらくして長いため息を吐いて言った。
『”ここ”に帰り道はないわ。来たばかりで状況が理解出来てないみたいだから言っといてあげる』
妖精は追い討ちをかけるように続けた。
『あと言っておくと貴方のお父さんとお母さん。 多分殺されてるわよ』