00.正義のヒーロー
......『待て悪党!正義のヒーロー”アリーマン”参上!アリーマン〜キーック!』
テレビの中のその男は、赤マントを靡かせアリーマンと名乗った。
そして黒い恐竜の腹に見事に右足が炸裂。
『ぐわっ!ヤ・ラ・レ・タ〜!』
黒い怪獣はその場に押し倒れた。アリーマンは着地を決めると腕を腰に当て、胸を張る。
『ハーハッハッハ!悪は破られる運命なのだ!』
声は中年男性そのものだった。
『今週もアリーマンを観てくれた君!次は君の所に行くかもな!とうっ!』
画面の向こうから指を突き立て、そう言いながら空へ飛びだって行った。
『アリーマンの闘いは続く....』
ナレーションの声と共にエンディングテーマが流れ始める。
「わぁ、かっこいー!」
テレビを夢中で見ていた娘は、膝の上で目を輝かせていた。
「アリーマンみたいになりたい?」
小さな娘を見下ろした。
大きな瞳がこちらを見つめる。
「うん!慧もなりたいよね!」
息子は車の玩具で一人遊びをしている。
だが横目でテレビを見ていたようで....
「うん」
と小さく言った。娘には聞こえていないようだ。
「ご飯できたよー」
嫁の声とともに娘は膝から下り、息子も慌てて席に着く。
リモコンを手に取り、テレビ画面の方へ向けた。
「お父さんまだぁー?」
娘はもう席に座って待っている。
甲高い声で俺を呼んだ。
............
ブツッ
ー遡る事約三十年前。
ある勇者が世界を救ったという”都市伝説”がどこからか生まれ、騒がれ始めた。
勇者は悪を打ち破る為命を懸けて戦い、そして打ち勝ったのだという。
だがそこで力尽き命を落とす。
その勇者の名は世界中に響き渡り、そして今アリーマンとしてきっとこの世を守ってくれているのだろうー