本屋のお仕事 ③
中田さんと小川さんという二人が仕事に参加して――また延原さんが本気を出し、今までの二倍の速さで動くことによって(おれが袋から出した本を回収すると同時に、自らも袋を開けていた)、今日入ってきた本を開ける作業はあっという間に終わってしまった。右腕の時計に目をやると、『09:47』。
「じゃあ、朝礼やるね」
店長がそういってレジカウンターの前に立つと――三人はいつもそうしているのだろう、延原さん、小川さん、中田さんの順に整列した。おれは見よう見まねで、中田さんの横に並ぶ。
「あらためて、おはようございます」
おはようございます。
みんながいうので、おれも少し遅れながらいった。
「まず連絡としてはぁー……みんなもう知ってると思うけど、夏目くんが入りました。いずれは夜入ることになるんだけど、まぁ例によって朝の仕事も体験しておいて欲しい、ってことでね。みなさん、いろいろ教えてあげてくださいね」
おれは左手に身体を向けて、会釈をする。中田さんと小川さんは微笑み、延原さんはウン、と頷いた。
「あとはねぇー……。あっ。昨日、追加発注分のコロコロコミックが売り切れちゃったね。やっぱり」
おれの横で、中田さん、小川さんが「あぁ〜……」と声をもらした。
「最近すごいねぇ」
「あんなにいっぱい入ってきてたのに……」
小川さんは続けた。
「最近すぐに売り切れちゃうから、今まで普通に買えてた子たちが買えなくってかわいそうなんですよ。来月号はメダルつくわけじゃないんですけど、やっぱり複数の予約は受けないようにしましょう。一家族様、一冊までで」
「みんなのところに行き渡るようにね」といったのは中田さん。……妖怪ウォッチ人気についてはまぁ知ってたけど、そんなにすごいのか……?
「夏目くんもこれから『妖怪ウォッチ』関連の商品の予約受けると思うけど、まず誰かに聞いてね。受けていいか」
小川さんは整列から上半身だけ乗り出して、おれに向かっていった。「はい」。頷きながら、返事をする。
「あとはね……高倉健さんの追悼本がいくつかの出版社からそれぞれ出てるから、注文を受ける時は気をつけること。『ソレジャナイヨ!』……って、言われちゃうからね。あっ、そうだ。NARUTOは連載が終わってから、相当売れてるみたいね。どう? チーちゃん」
「はい。多めに発注してますし、在庫もあるので今のとこ大丈夫です」
小川さんが返事をする。……彼女が『コミック担当』ってやつか?
「じゃあ、最後に……これは何度も言ってることだけど、二十八日の日曜から一月四日までの八日間、本が入ってこなくなるからね。出版社さんもお休みに入っちゃうから、お客様から注文を受けた際には必ず、入荷が遅れてしまうかもしれないと伝えること。在庫の状況によっては年内は難しいって、ちゃんと説明してあげてね。……はい、そんなとこかな。今日の掃除は中田さん。アイちゃん、夏目くんにはまず開店から、教えてあげてね。以上。よろしくおねがいします」
よろしくおねがいします。
店長がバックヤードに入ると、すぐに店内の電気、全てがついた。小川さんと中田さんは、それぞれが担当しているのであろう、売り場に向かう。
「きて」
振り向くと、延原さんが立っていた。




