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その男、倉田光 ②
去年の十二月三十日。おれが初めて、倉田さんとレジに入った日のこと。
バックヤードに現れた彼を見た第一印象は、『熊』だった。デカい。身長は赤木さんとあんまり変わらないくらいなのに、体積は二倍くらいありそうだ。
太っているのではない。ガタイが良い。黒いダウンコートを着ているので、更に量増されているように見える。太く、青いジーンズ。濃い赤のブーツはゴツい。短髪。眉が太く、濃く、瞳に近い所にあって、目力がスゴい。
「オォ! 夏目くん!」
そして、声がデカい。その声は低音の効いた、よく通る声だった。
「覚えてるかな? オレは倉田光! よろしくな!」
弾けんばかりの笑顔に、圧される。
「よ、よろしくお願いします……」
差し出された手に、左手で応える。
少しも遠慮しない、握力だった。




