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マホロバ堂書店でございます  作者: 木下秋
夏目、書店員になる
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23/33

赤木禅という男③

「イヤホンを買う時はな。まず『予算』を決めるんだ」



「はぁ、予算」



 バイト帰り。赤木さんに誘われて、ラーメンを食べに来ていた。今まで来たことのなかった店で、彼に連れられてきた。最近わかったことなのだが、彼はラーメンとオーディオが好きで、お寺の息子らしい(そうは見えない)。



「だいたい『三千』、『五千』、『一万』、『二万』、『五万以上』とかな。そうやって予算を決めてから、買いに行く。そんでもって、試聴しまくる。雑誌のレビューとかを参考にするのもいいんだが、オーディオってのは聴く人によっても全然違うからな。その人の好きな楽器だったり、好きなジャンルによってな。例えば凄まじい低音を『ヤベー! たまんねぇ!』って興奮する人だっているし、『下品だ』とか、『原音からかけ離れすぎている』ってけなす人もいる。それはやっぱ人それぞれで、音は目に見えねぇから難しいんだ」



 仲良くなると、彼はよく喋った。相変わらず言葉遣いは乱暴だが、几帳面でやや神経質な性格が、見えてきた。



「だから、自分の耳を信じて、片っ端から試聴するしかねぇ。あとは最近だと洒落たデザインも多いから、『見た目』で選んだり、わかってきたらブランドで選んだりな。俺はちなみに、ドイツのAKGってブランドがすきだ。老舗でな。まぁでも、『リケーブル』できるやつがオススメだ」



「りけーぶる?」



「『リケーブル』ってのはなぁ……」



 二個上の先輩は、おれに時間の長さを忘れさせた。


 まだ出会って数回だったけど、この人とは長い付き合いになるんだろうなぁと、なんとなく、感じていた。

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