表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マホロバ堂書店でございます  作者: 木下秋
夏目、書店員になる
21/33

赤木禅という男①

 ――バァックション‼︎


 店内に、けたたましい声が響いた。


 ……説明するまでもないけど、クシャミだ。経済誌のコーナーで立ち読みをしていたサラリーマン風、頭の涼しげな中年男が、放った。今はズズズと、鼻をすすっている。


 彼は本を棚に戻すと、店を出た。



「ありがとうございましたぁー」



「……」



 横を見ると――やはりというか、赤木さんが不機嫌そうな顔をしている。



「……わけわかんねぇ」



 ボソリと、いう。



「立ち読みだけしに来て……しかも雑誌見開いて、クシャミふりかけて帰っていきやがった……!」



 赤木さんのこめかみに、青筋が浮かんで、ピクピクする。



「……それを買ってく人が、いるかもしんないんだぜぇ……⁉︎」



 おれの方を向き、同意を求めるようにいう。おれは「はぁ……」と、返事をする。



「お前、そんな本、買いたいと思うか? オッサンのクシャミふりかかった雑誌だぜ。オッサンのクシャミて、世界で一番キタナイもんだぜ!」



 いや、それは言い過ぎだろう。でも、まぁすき好んで『オッサンのクシャミのふりかかった雑誌』を買いたいと思う人も、いないとは思うけど。



「許せねぇよなぁ。あと、平積みの本の上に荷物置くヤツな」



 赤木さんの怒りは、しばらく収まりそうにない。



「売りもんだっての! お前が置いてんのは! 売りもんの上だっての! 信じらんねぇよ!」



 赤木さんは、プンスカ怒る。おれは、苦笑するしかない。



 言葉遣いの荒い、このお客さんにも容赦ないこの人の名前は、赤木禅あかぎぜん


 ……まぁ、悪い人じゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ