仲間
そろそろ陽も傾いてきた頃、エルの大活躍によって一同は大量のツキニコ草を採集していた。
「おおこりゃ大猟だな。結構な稼ぎになるぞ」
「ほんと。エル大活躍だったねえ」
「そろそろ日が暮れるし帰るか!ギルドに行くぞー」
意気揚々と帰り道を急ぐ一同。バージルのもつ大きな袋にはツキニコ草がパンパンに詰まっている。
* * *
ギルド
「あらあ、これはたくさん採集しましたね。大歓迎ですよ。ツキニコ草はいくらあっても困りませんからね」
ギルドへ採集したツキニコ草を持っていくと担当のお姉さんが驚く。
無理もない。あの一面ブルーテイルの草原で小さなツキニコ草を見つけるのは至難の業だと思われるだろう。現に安全な低ランクだが誰も受ける人がいない非常に不人気な仕事だったのだ。しかしエルを有する今の彼らには余裕である。なんということもない。朝飯前だ。
ギルドで報酬を受け取った彼らは宿屋へと向かっていた。
彼らの懐はあたたかい。低ランクだが非常に見つけにくいツキニコ草を地道に探さなければならないこの仕事はかなり高報酬だったのだ。しかも出来高制。大量に採集したので一気に収入が入った。
「いやあ、採集がこんないい仕事だとはね。僕たち今まで魔物退治メインで採集系はあんまりやったことなかったから知らなかったよ」
すっかり味をしめたフランデルがしみじみと言う。
「そうね。わたしたちだけだったらいくらも見つけられなかったと思うけど」
「確かにそうだ。エル様様だな、よっ植物博士!」
「やだな、植物博士はやめてよ。でも私のおかげであることは否めないな」
しっかり自分の功績を主張することは忘れないエル。その流れでそのままさらりと提案した。
「それで提案なんだけど、私を君たちの仲間に入れてくれないかな?とりあえず植物に関してはものすごく役に立つ自身があるよ、私。薬とかも作れるし」
エルは今回の採集の仕事でこの世界で生きていけそうだと確信したが、それでもやはり異世界人である。この世界の常識やその他諸々を教えてくれる人が側にいるほうがいいに決まっている。彼らはエルがエルフであるという事情も知っている。
「それはもう歓迎だ!大歓迎だよ!別にお前が便利だからとかじゃねえ。一仲間としてお前と一緒にいたいと思う。なあ、皆」
エルの提案にリックが歓迎する。ウインクしながら皆を見渡すと、一同は揃ってにっこり笑って頷いた。
「もちろん!大歓迎だ。エルはとても興味深い」
「歓迎するわ。仲良くしましょう。エルってとっても魅力的だし!」
「わ!マリア、エルを邪な目でみるんじゃないよー」
「いいじゃないフラン。あんたよりよっぽど素敵だわ」
「ひどーい。でも僕も大歓迎だよ!魔術とか教えてもーらい!」
「よしよし、決まりだな。ようこそエル!」
こうしてエルは無事にこの世界に居場所を手に入れた。
「じゃあさっさと帰ろうぜ。もう腹減った!」
「宿屋に帰ったらおっいしいご飯が待ってるよ!」