ギルド
翌朝
エルと四人は冒険者ギルドの前に来ていた。
街の中央にそびえ立つ大きな建物だ。冒険者らしき人たちが多く出入りしている。
「ここが、冒険者ギルド…」
エルが建物を見上げる。
冷却の魔術をしっかり施したローブを着て、耳を隠すためにフードもかぶっているためかなり怪しい。
黒ずくめのエルを見ながらリックが頷く。
「そうさ。ここが冒険者ギルド。冒険者のスタート地点だな。それにしてもエル、お前なんかあれだな」
「大魔術師、ってかんじだよね」
リックの言葉をフランデルが引き継ぐ。一同が揃って納得した。確かにフードをかぶった長いローブの男。大きな杖でもついていたらかなりそれっぽいだろう。
「かんじっていうか、そもそも私は結構大魔術師だよ」
「そうなの?エルフってすごいのねぇ。それよりさっさと入りましょう」
「…………」
エルの大魔術師発言はマリアに軽く流された。
別に冗談ではない。実際エルは結構な大魔術師であったりするのだ。魔力も強大であるし、現に彼は大きな白い森の主であるのだから。
しかし彼はそれ以上何も言わず、一同はギルドの中へ入った。
ギルドの中はとても天井が高く、天窓から光が降り注ぐとても美しいものだった。奥では人々が慌ただしく行き交い、中央の大きな円状の広場には多くの冒険者たちが歓談している。
エルは登録のために受付に向かった。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。冒険者の登録ですか?」
「…はい」
「文字は書けますか?はい。ではここにお名前と性別、ご自分のお持ちの能力、武器、魔術が使える方は属性もお書きください」
「属性?」
「ええ、火や水といった簡単な書き方で結構です。ではここにどうぞ」
受付の女性が薄い水晶と細いペンを差し出す。エルは書き込み始めた。
(名前は、正式名が必要だろうか…魔術の属性って…属性も何もないんだけどどうしよう)
エルの書き込んだ内容は、
名前:エル・イース
性別:男
能力:治癒・浄化、緑を操る
武器:弓矢
魔術:全部
名前は結局正式名ではなく元の世界でもよく使っていた短縮した名で登録することにした。
それはいいが魔術が問題だ。属性といってもエルはそんなこと意識したことはないし、そもそもこの世界とエルのいた世界の魔術はまったく同じではないだろう。そもそもエルの世界では魔術ではなく魔法と言っていたし。エルは火も水も風も雷も、つまり考えられうる属性はとりあえず全部使える。エルフは広く魔法の申し子として知られていた。
そういうわけでとりあえず全部と書いてみた。もうダメもとであるが。
「書けました」
「はい、ありがとうございます。…エル・イースさんですね。能力は治癒・浄化、…緑を操る…?」
「緑を操る」で彼女は一旦声が止まるが、続けて読み進めていく。
「魔術の属性は……え?!全部ですか?」
「…全部、です」
「そうですか。すごいですね。ではエルさん、これで登録させていただきます。少々お待ちくださいね」
ダメもとで肯定すると、意外と大丈夫だった。
少々も待つことなく登録証は出来上がった。
「登録が完了しました。このギルド登録証をお持ちください。紛失しても再発行は可能ですが少々お金がかかりますのでお気をつけください。では、今日から貴方も冒険者です。いってらっしゃい」
登録が完了した登録証をエルに手渡すと受付の女性は爽やかな笑顔で見送ってくれた。