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白い森の使者  作者: ゆきおんな
第二章
21/36

分かれ道

 朝。

 マリント平原で一晩明かした冒険者御一行。

 早々に朝食をとり終えた彼らの前には、分かれ道。

 そのまままっすぐの広い道、右と左に普通の道、そのちょっと左に細い道。




 「俺はこの細い道が怪しいと思う。こっちに来いと言わんばかりの怪しさじゃねえか?」


 リックが左の細い道を指して言う。


 「いや、むしろこっち来るな、って感じじゃないか?この頼りない感じはすぐに行き止まりのような気がするが…」


 バージルはリックの意見に反対のようである。


 「わたしはやっぱりこの真ん中の広い道がいいな。こう、正々堂々とした感じがいいわよね」


 「えええ。絶対違うよ違う!真ん中はないと思うなあ」


 マリアは真ん中の広い道がいいと言い、フランデルは違うと言う。








 「うーん…どうするよ。どれもそうな気がするし違う気もする」


 リックは頭を抱えた。頭を抱えて、エルを見た。



 「エル、お前はどう思う?」


 「私…?」


 自分に振られてエルが分かれ道をじっと見つめる。正直エルは今、何も考えていなかった。ただ突っ立っていただけである。



 「ほらほら、なんかエルフの力的な、そういうあれでわからない?」


 「そうよそうよ!エルフの貴方なら楽勝じゃない」


 フランデルとマリアが無茶な要求をする。エルはエルフだが、エルフは別に万能じゃない。普通にわからないものはわからないのである。



 「私もわからないよ…、もうどれでもいいんじゃないかな。どの道を選んでも結局先で繋がってたりして…」


 エルは投げやりに答えた。しかしその言葉は結構本気だったりする。


 「えー、エルわかんないんの?どうするの?」









 「うーん……、!あれ!」


 一同が頭を悩ませていると、マリアが何かに気づいた。


 「これ見て!なんか看板かなんかの跡じゃない?」


 細い道の入口のところに何かが刺さっていたような跡があった。少し土を掘ってみると、朽ちた木が深く刺さっている。


 「看板だ…、これ折れてるけど絶対看板の跡だぜ!」


 リックが喜びの声を上げる。


 「やだもうわたしったら、超お手柄!」


 「おう!お手柄だマリア。ここがクルトの森への道だな」


 ドヤ顔のマリアをバージルが称える。しかし、フランデルが看板の跡を見つめながら言った。




 

 「でもこれ、『この先行き止まり』の看板だったりして…」



 一同の動きが止まった。

 

 「ちょ、フラン!なんということを!」


 「えー、でもそうかもしれないじゃん。意気揚々とこの道を行って行き止まりだった時のガッカリ感ははかりしれないよ」


 確かにそうだ。一同は無言で看板跡を見つめる。







 静かになった一同。

 不意にエルがしゃがみ、看板跡に手をかざした。そして目を閉じる。


 「エル?」


 エルはバージルの言葉に答えずひたすら目を閉じてじっとしている。すると、エルは目を開けた。

 にっこり笑って一同を見る。



 「この道で間違いないみたいだよ」





 「えええ?!」


 「なにそれ魔術?エルフの力?わからないってさっき言ってたじゃん」


 フランデルがエルに詰め寄る。目が怖い。


 「何もないところからは何もわからないよ、私も。今のは看板跡の記憶を読み取ったんだ」


 エルがしれっと言う。


 「記憶?」


 「そう。ものには記憶が宿っている。朽ちてしまっているけどこの看板の跡の木にもね」


 「すごい!」


 「この先クルトの森って書いてあったようだ」


 「へえ、それって道自体の記憶は読めねえのか?だったらすぐじゃねえ?」


 リックがエルに問う。確かに道の記憶を読み取れればそもそも迷うことなんかない。


 「残念だけどそこまでは…。マリアが看板の跡に気づかなかったら迷子だっただろうね」


 「わたし大活躍ね!」


 エルの言葉にマリアが笑みを深くする。











 「よし、じゃあこの細い道を行きますか!」


 「クルトの森はすぐそこよー!」


 「待ってろよ魚!」


 「やっほー!」


 冒険者御一行はクルトの森目指し、意気揚々と進む。




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