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白い森の使者  作者: ゆきおんな
第二章
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夕食

 旅人三人と別れた冒険者御一行。

 マリント平原には夕日が沈みつつある。




 「結構歩いたな。そろそろ今夜の野宿にいいところを探さないと」


 「夕日が綺麗だね」


 エルが夕日に微笑むと隣でフランデルが目を細めた。


 「…美味しそう」








 ベスト野宿ポジションを探しつつ進む一行。

 どうやらマリント平原も端の方に来たらしい。広大だった平原も道形になってきた。

 すると、エルが何かを発見した。


 「この先に分かれ道がある…」


 そのまま進んでみると、なるほど分かれ道に行きあたった。道が一旦大きく開けて広場のようになった、その先だ。

 そのまままっすぐの広い道。右と左に普通の道。もうちょっと左に細い道。中途半端に四つに分かれている。



 「どうするよ、これ」


 「四択か…二択くらいがよかったなあ」


 一同が頭を抱えるが、リックが一度頷くと手を叩いた。



 「とりあえず、飯だ!今日はもうここで野宿しようぜ」


 













 とりあえず岐路前の広場で野宿することに決めた一同。

 辺りはもうすっかり暗くなった。

 今日の夕食も大量に捕まえたあのシュークロウだ。エルの冷凍&解凍魔法によりいつでも新鮮とれたての美味しさが保たれている。


 「はいはいはーい夕食のできあがりだよー!」


 「ローストシュークロウ、マリントプディング添えと」


 「お馴染みバージルスープだ」


 あつあつの料理から湯気が立ち昇る。



 「マリントプディング?」


 「マリント平原で採れたスパイスが入ってまーす。まあだいたい普通のプディングだよ」


 「ほらほら先食べるわよ。いただきまーす」








 「美味い!」


 「美味しいね、これ。卵なんかあったんだ。持ってきてたの?」


 エルがマリントプディングを食べながら尋ねる。美味しい。


 「プディング美味しいでしょ?卵はね、さっきいい感じのがあったから何個か持ってきた」


 フランデルがにこにこしながらしれっと言う。


 「…え?持ってきた?」


 「そうそう。なんかの魔物の巣みたいなのがあってさ、そこからちょっと拝借」


 「え…」


 「マッドホーンかなと思ったけど美味しいから違うね。そもそもマッドホーンは卵じゃない気がするし、なんだろね」


 エルがプディングを見る。フランデルの顔を見る。隣に座っているリックの顔も見た。固まっている。


 「…………」


 少し考えて、


 「ま、いいか」


 食事を再開した。





 「よくねえよ!」


 そのまま気にせずにプディングを食べ始めたエルにリックが突っ込む。彼のフォークを持った右手は若干震えていた。


 「何が良くないのさリックー」


 「何って、なにだよ!何の卵だよ!こええよ!」

 

 首をかしげるフランデルにリックが食ってかかる。エルは静かに食事中である。



 「大丈夫大丈夫。美味しいじゃんこの卵」


 「何の卵だよお…」


 ウインクして親指を立てるフランデルにリックはうなだれた。右手がわなわなと震えている。


 「エル…お前よく平気な顔で食ってられるな…すごいよ」


 「美味しいし」


 エルは平然と美味しくプディングを完食した。






 エルたちと少し離れたところで食事をしていたマリアとバージル。


 「なになに?どうしたの?プディング食べないの、リック?」


 リックの残ったままのプディングにマリアが気づいた。


 「え、あ…いや」


 「なによー、いらないんだったらわたしがもーらい」


 リックが言いよどんでいるうちに残りのプディングはあっというまにマリアの胃の中に収まった。


 「うん、美味しい!」


 「…うん」


 「なによもう、リック。ジロジロ見て。あんたがぼーっとしてるのが悪いのよ」


 「いや、いいんだ。知らない方が」


 「?まあいいわ、皆食べ終わったならさっさと片付けちゃうわよ」




 

 エルは二人の様子を見ながらくすりと笑った。


 (なんか、なんだか楽しいな)










 こうしてマリント平原での夜は更けていく。

 




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