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白い森の使者  作者: ゆきおんな
第二章
18/36

いただきます

 さて、シュークロウの群れを撃ち落とした冒険者御一行。

 エルによる浄化&冷凍作業も完了してあとは待ちに待った昼食、の準備である。



 「さてさてどうする?このシュークロウ。どうやって食べる?」


 先ほどから笑顔が緩みっぱなしのフランデルがにこにこ、いや、にやにやしながら言う。

 目の前には凍ったシュークロウが山のように積み重なっている。



 「そうね、まずはやっぱり普通に焼いて食べたいわよね。新鮮だからやっわらかくて美味しいわよ!」


 「スープにするのもいいな」


 言いつつマリアは早速どのシュークロウを食べようかと品定めに入っている。




 「それはいいんだけど、調味料とかあるの?」


 日帰り冒険のつもりだったとリックが昨日言っていたことを思い出したエル。ならば調味料はもとより調理器具も持っていないのではないのかと尋ねた。


 「あるぞ。ほら。大体のものは全部揃っている」


 するとバージルが鞄からポーチを取り出し、中から調味料鍋やフライパンその他諸々を出してみせる。

 ちなみにこのポーチ及びポーチの入った鞄は四次元ポケット的な構造になっているので驚く程色々収納されている。エルは全く驚かないが、彼の世界にもこの類のものは普通に存在していた。


 「木の実も果物も葉類もあるぜ」


 ここまでの道すがらめぼしい食材は一通り採ってきてある。さすがはグルメ集団抜かりはない。








 

 「よし決めた。これとこれと…これが一番大きいわ!エル、解凍頼んだ!」


 どうやらマリアが昼食に食べるシュークロウを選んだらしい。エルがそれらを解凍する。一瞬でカチカチに凍っていたシュークロウの羽毛がふわふわを取り戻した。


 「おおお!すごい生きてるみたい!」



 「あ、それ君が捕まえたやつだからたぶんまだ生きてるよ」


 「ええ!うそ!」


 フランデルが捕まえたシュークロウは水鉄砲で気を失っているだけで死んではいない。コールドスリープといったところか。

 エルの言葉にフランデルがシュークロウをつついてみる。動かない。軽く叩いてみる。変化なし。やや強く殴ってみた。ギャッと呻いて目を覚ました。


 「うわあほんとだ生きてる!すっごいこれ!超新鮮じゃん」


 「おお!すげえな。ちゃちゃっと捌いて料理しちまおうぜ」


 













 そんなこんなで料理が出来上がった。辺りにはいい香りが漂っている。


 「できあがりー」


 「シュークロウの香草姿焼き」


 「と、バージル特製煮込みスープだ」


 焚き火付近に作った急ごしらえの食事スペースにはなかなかに豪華な料理が並んでいた。

 

 「美味しそう!はやく食べよう」


 「いただきます!」

 「いただきます!」

 「いただきます!」

 「いただきます!」

 「いただきます」



 

 エルが香草姿焼きを一口口に運ぶ。


 「…美味しい」


 予想以上に柔らかくジューシーだった。道中に採ってきた香草がいいアクセントになっている。エルの様子を見たリックが笑う。


 「だろう?シュークロウ本当美味いんだよ。ま、俺らの料理の腕もあるけどな!」


 「俺のスープも飲んでみな。びっくりするぜ美味しさに。しかも今日のはとれたてシュークロウで出汁をとった贅沢すぎるバージルスープだ」


 バージルが得意のスープにウインクする。

 エルは言われるがままに一口飲んでみた。美味しい。

 彼らの料理の腕はなかなかのものだった。美味しい。







 


 あっというまに料理は一同の胃の中に収まっていった。

 

 「美味かったな。あっというまだ」


 「本当に美味しかった。君たちすごい料理上手だね」


 エルが感心して言う。


 「まあね。美味しいもの食べるためには努力を惜しまない!それが僕たちだよ」


 フランデルの言葉にほかの三人が力強く頷く。


 「美味しいもの食べないとやる気でないもの。でもエル、貴方の手際も鮮やかだったわ」


 「私も料理は好きだからね」




 「でも俺たちでこれだけ美味かったら宿屋で料理してもらったらそれはもう…」

 

 リックが想像してにやける。


 「宿屋で料理してもらう!絶対に!」


 「それまでに食べ尽くさないようにしないとな」


 「え、これ結構かなりの量あるよ。さすがに食べ尽くすことは……あるかもしれない」


 エルはだいぶ彼らのことを理解してきたようだ。彼らならばおおいにありえる。


 「これ冷凍保存できなかったら宿屋までもたなかったな。エル様様だ」


 頼りにしてるぜ、とリックが素敵にウインクした。背景は冷凍シュークロウの山である。




 


 「あとはこの冷凍シュークロウをまとめて鞄に入れちまうか」


 バージルがシュークロウの山を見て、エルを見た。エルが頷く。


 「私が冷却魔法をかけるよ。持続性の」


 「おおありがたい。じゃあこの袋に頼めるか?」


 バージルが待ってましたとばかりに少し大きめの袋を差し出す。もちろんこれも四次元ポケット構造である。


 「了解。…はい」


 受け取って刹那、すぐに返す。


 「おお、はやいな。ありがとう」


 「私が解除するまで持続するから安心して」


 「エルのローブと同じだな。この袋を持てば俺も歩く冷凍庫だ」


 バージルが冷却魔法を施した袋にシュークロウを入れていく。

 全て入れ終えるときっちりと紐を結んで鞄に入れた。ちなみにさっき食べたシュークロウの羽毛もきっちり収納済みである。ぬかりはない。



 



 「よし!じゃあ夕食まで旅をつづけるぞ!」



 リックの掛け声とともに一同は再び美味しい魚目指してマリント平原を歩き始めた。

 彼らの冒険はまだまだ続く。

 

 




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