冒険のはじまり
新たにエルが加わった四人組、改め五人組は今日も平和である。あれから大きな事件という事件もなく、ただいま宿屋の食堂で美味しく食事中。
「ところで、私たちは肩書き的には冒険者、なんでしょう?冒険はしないの?ギルドで出会ったとあるパーティーはなんか宝物を求めて一山越えてきたとか言ってたけど」
エルが気になっているところである。
先日ギルドを訪れたときに出会ったのである。「ザ・冒険者」といった風体の男女に。エルがそうだったら面倒くさいなと想像していた「冒険者」まさにそのままだった。
エルはいかにもな「冒険者」になるつもりはさらさらない。採集や簡単な魔物退治くらいでいい。秘宝とか探険とか面倒くさい。
ところが、
エルの質問に一同が顔を見合わす。
「それ、ナイスアイディアじゃねえか?」
「そうね!最近ここらの魔物退治ばっかで飽きちゃったのよね」
いいことを聞いたとばかりに一同が乗ってくる。雲行きが怪しくなってきた。
「え、ちょっと待って」
「おお、いいこと言うじゃねえかエル。ちょっくら冒険でもしようか」
「いいねいいね!わくわくするよ!」
「え……」
かくして、一同の冒険が決まった。
* * *
ここは、緑の谷。彼らの拠点である宿屋のある街、アロンを出てすぐの場所である。その名の通り見事な緑色だ。ブルーテイル草原といい、アロンの周りはなにかと鮮やかである。
「…ところで、どこに行くの?」
意気揚々と街を出たはいいがどこに向かうつもりなのだろう。エルはとりあえず皆についてきただけである。
「未定だ!」
リックは明るく言い切った。
(嘘だろう……)
冗談だと皆の顔を見渡すエルだったが、一同は揃ってにっこり頷いている。
「えええ…ちょっと…」
「みんなであちこち行ってみようよ。そしたらすごい情報とか手に入るかもだよ」
「そうだ。それだけでもう立派な冒険といえよう!」
冷静に見えたバージルでさえ、明らかなうきうきが隠しきれていない。
「とりあえずこの谷をずっと行くぞ!」
リックの声とともに一同は緑の谷をひたすら進むのである。
10分ほどただひたすら緑の谷を歩いていると、フランデルが小さな小屋を発見した。
「こんなところに小屋があるよ」
「あら、ログハウスというにはアレだけど結構素敵な小屋じゃない」
「人が住んでいるのかな?」
リックがドアをノックする。
すると、ドアが開いた。
「お客さんかな?」