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Xpoint-クロス・ポイント-  作者: 織間リオ
第三章【セカンド・ワールド・ブレイク】
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16、世界破壊、再び

 インド洋上での戦闘から一ヶ月の時が過ぎていた。

 各地では、今年を世界暦元年と呼ぶ者が後を絶たなかった。逆に言えば、もう、どちらの世界の住人でも、今が世界暦元年だということを知らない者はいなかった。中には、この大変な事態であるにも関わらず、歴史的な時期に生きることができた、と喜ぶ者すら出てきていた。

 冗談じゃない。こっちはそのせいで戦いをしなければならないのだ。戦って、戦って、そして殺していく。

 不意に、潤の足はその歩みを止めた。

 目の前に、見知った男を見かけてからだ。奇しくも、前回と同じ場所での遭遇であった。

「父さん・・・・・・!」

潤の目の前には、実父、矢倉正男がいた。正男から、どこか冷ややかな怒りを含んだ視線を感じた。

「一体何しに・・・・・・ここに・・・・・・」

「あと一分で、また世界破壊が起こる」

「え・・・・・・?」

唐突な答えに、潤は聞き返した。だが、正男はそんな潤をお構いなしに続けた。

「お前に・・・・・・お前の血筋によって!!」

「な、何を! 僕は何も!!」

正男の言葉を否定する。だが、正男はそれによって話の内容を変える気はないらしく、かまわずに続けた。

「また、世界は新たな混沌を生む! 新たな戦いが生まれる!!」

「・・・・・・」

言い返す気力はなかった。言い返したところで、正男が言葉を変える気はないと分かったからだ。

「破壊は破壊を生み、人々は滅びの道を歩むことになる」

「滅びの・・・・・・道?」

「そうだ」

正男は、初めて潤に対して言葉を返した。

「そして、その発端となるのが、お前だ、潤」

「僕? そんな、僕は!」

クリエイター、創造者だと言おうとするのを、正男はさえぎり、最後の言葉を紡いだ。

「潤。お前こそが、真の、破壊者だ・・・・・・!」

その一言と同時に、地面がものすごい勢いで揺れ始める。

「な・・・・・・地震!?」

意味もなく辺りを見回す。地震ではあるが、地震ではない。どこかからか、かなりのエネルギーを感じる。

 まさか、本当に世界破壊が起こるのか。

 二回目の世界破壊。新たな混沌、新たな戦い。

 戦いによる、新たな犠牲者。

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 潤を、いや、両世界の全てが、まばゆい光に包まれた。



 イスカ・マルチは、まばゆい光に包まれた直後、だだっ広い草原の中にいた。味方、敵もろとも、見知らぬ場所へと放り込まれたのである。

 イスカたちは先ほどまで、無機質な金属ばかりで覆われた山脈で戦っていた。幸いなことに、彼らは、彼らの『機体』と共に飛ばされていた。

『おいおい、どうなってんだよ? さっきまで奴らの基地にいたはずだろ?』

「俺に聞くなよ」

マチュンタ・イアクリアは怪訝そうな表情をモニター越しにしていたが、イスカは答えようがなかった。そんなのは、こっちが聞きたいぐらいなのだ。

『まぁ、いいじゃねぇか、そんなこと』

能天気なキア・クルブスが、能天気に答えた。

『目の前の敵を倒せば、一件落着ってな!!』

言うなり、キアは右掌に搭載されたビーム砲を発射する。未だ動揺しているクルノア軍の機体、『ファルス』は爆散する。

「了解だ!!」

イスカも、機体の両腕をソードモードに変形させ、ファルスを両断する。

『分かりましたよ、やりゃぁいんだろ、やりゃぁ!!』

 マチュンタもまた、機体の両腕をバルカンモードにして連射する。

 イスカ、マチュンタ、キアの乗る機体『トルシャ』は、腕の先を変形させることによって様々な攻撃が可能である。見た目はただの手だが、その掌には大口径のビーム砲が格納されている。また、その指先にもそれぞれビーム発射装置が装備されている。この装備はビームモードと呼ばれ、バルカンの効かない特殊合金を使用している機体などに対して有効である。バルカンモードは、囲まれた場合などの掃討時に有効なモードである。そして、巨大な刀身を持つソードモード。ソードモードでは、両腕それぞれを変えることができるが、その際、短めで手数を重視したショートソード、威力とリーチを重視したロングソード、ビームモードの状態のまま、剣を握り、各ビーム兵器からのエネルギーを送って剣にビームを纏わせる、ビームブレイドがある。

『イスカ! 上だ!』

マチュンタの声と同時にトルシャのカメラを丈夫へと移動させる。すでに真上から、ファルスが斬撃を叩き込もうとしている。

 イスカは素早く剣でその攻撃を受け止めると、すぐに弾いて、リーチの長さを生かしてファルスを両断する。

『片付いたか?』

「なんとか」

『こっちも』

辺りは沈黙していた。残ったのは、無傷で残る三機のトルシャだけであった。

「? なんだ、この反応は?」

『あ?』

マチュンタもそれにつられるようにモニターを凝視し始めた。モニターを見て、マチュンタはさらに疑念を含んで『あ?』と呟いた。

『艦数一、そこから射出される戦闘機、二』

『なんだ? どこの部隊だ? 所属は?』

「特定不能」

示されるデータに三人はそれぞれ疑念の声を上げた。だが、結局は戦闘機だと、三人はあまり危険度の高いものではないと判断した。

 その戦闘機が、ジャスティスとジャストが乗る、コアフライヤーとも知らずに。


 リアーガ・キースは、まばゆい光のおさまった直後、目の前で行われていた戦闘に、自衛という形で介入せざるを得なくなってしまった。

「ちくしょっ・・・・・・クルーグ、どこだ!」

相棒のクルーグ・ペインの名を呼ぶが、この戦闘の中で誰かが返事を返すはずもなく、その間にも、銃弾がこちらへと襲い掛かってくる。

「一体なんなんだよ、こいつら・・・・・・剛身者がこんなに・・・・・・どうなってんだよ、ここは!!」

 そのうちの一人の、どう見ても強そうな少年がこちらへと突進してくる。黄色い光を纏った少年は両手それぞれに握られた剣をこちらへと振り下ろしてきた。むろんこちらもやられるわけにはいかない。

「ファイアソード!」

炎の剣。そう、リアーガは火を操る者である。

「お前、ネオ・ブレイク軍か!? 一体どこから?」

「ネオ・ブレイク?そんなもの、俺は知らん!!」

言うなり、リアーガは少年の剣を弾き、右手に握っていた剣を投げつける。少年がそれを剣で弾くのと同時に、リアーガは右手を引き、そして何かを解き放つかのように、右掌を少年へと突き出す。その掌から炎が溢れ、少年へと襲い掛かる。

「くっ!」

少年が剣である程度防ぎつつ、一旦距離を取る。

「ナイッス!! 剣がなけりゃ、こっちのも・・・・・・」

そこでリアーガの言葉は途切れた。目の前の事実に驚愕したからだ。

 少年の剣が、再び生成された。何もないところから、まるで原子を集合させていったような生成である。

 しかも、あんな至近距離での攻撃だったのに、あまりダメージを受けている様子がない。ほとんど効いていないのだ。

「ちくしょっ・・・・・・やられてたまるかっ!!」

リアーガは両掌から炎を溢れさせて、少年の剣を迎え撃つ。炎によって少年の剣をとどめてはいるが、確実にこちらが押されてるのは目の見えて分かった。

「ネオ・ブレイクではないのに、何故こんなところにっ!!」

 こっちが聞きたいくらいだ。

「ここから立ち去れッ!! 死にたいのか、お前は!」

「誰が!!」

 こちらの腕を両断されるのではと思えたとき、直進する光がリアーガと少年の間を駆け抜ける。光は少年の腕をかすめる。少年はすぐさま後退し、状況を把握しようとしている。

「クルーグ! 無事か!?」

「我は無事だ。さぁ、早く国に戻るぞ。民が待っておる」

「ああ!」

少年をかすめた光には電撃効果が付与されている。おそらく、少年の腕はシビレが来ているはずだ。

 しかし、少年にもまた、味方はいた。

「闘也! 大丈夫か!」

「乱州。問題はない。だが、ネオ・ブレイクではないと・・・・・・」

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇっ!!」

リアーガは右掌から炎を溢れさせる。乱州と呼ばれた少年がリアーガの攻撃に真っ向から接近する。

 しかし、当たったと思われる攻撃はいとも容易くかわされ、腹部に強烈な打撃を食らい、リアーガは吹っ飛ばされた。

「くっ・・・・・・いくぞ、クルーグ!」

「ああ!」

二人は、少年達に向かって、真っ向から戦いを挑んだ。

 自分達の、国へと戻り行くために。


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