13、火と水の再戦
潤が振り下ろした剣を、闘也は受け止めた。闘也はその剣を弾き返し、返す刀で斬りかかった。潤が距離を取りながらビームを放って後退する。闘也はその銃口が向けられると同時に移動し、火の輪くぐりのようにすり抜けると、潤とのつばぜり合いにもつれ込んだ。
「攻め込んで戦いが終わるかっ!!」
「横槍を入れるのは、ジャスティスたちと同じ行為だ!」
互いを罵り合いながら、一旦離れ、すぐに接近し、切り結ぶ。ついては離れ、すれ違う。だが、互いに決めの一手を決められずにいた。
「お前達は、矛盾しているっ!!」
潤が叫び、チャージさせた太いビームを発射してくる。彼はこの三ヶ月間の間に、剣を改造し、チャージ機能すら、ビームに取り付けたのである。
闘也は、そのビームをかわして、反撃の銃弾を放つ。しかし、その銃弾は潤が掲げたシールドに弾かれ、失速する。闘也はソウルブーメランを生成し、それを潤に向かって投げつけ、自らもそれに続くように飛び出す。潤はおそらくブーメランに気が逸れていたのだろう。迫り来るブーメランを悠然と切り捨てる。だが、そこに出来たのは大きな隙だ。闘也はソウルソードを振り下ろし、咄嗟に掲げられた潤のシールドを叩っ斬った。
「下がれ、潤! 戦いでついた血は、二度とふき取れない!!」
「あんたには分からない!!!」
潤がシールドを破壊されたにも関わらず、こちらに斬りかかってくる。一度はその斬撃をかわしたが、返す刀は避けきれず、ソウルソードで受け止める。
「僕は二人も、近しい人たちを失った!! かけがえのない、たった一つの命しか持たない人たちを!!」
「お前が二人なら!」
闘也は叩きつけられた剣を押し返す。
「こっちは、何百人と失ってきた!!」
同胞であるはずのエスパーも、サイコストも、同様に失ってきた。自らの手で屠った者だっている。カスタムも、むろん同じだ。
「俺はそれを受け止める!!」
闘也は潤を弾くと、ソウルランスを作り、それをやや下がり気味に投擲する。潤は余裕の動きでかわして見せた。だが、闘也は驚きはしなかった。もとより、今の攻撃で倒す気がなかったからだ。
「悲しみ続けた先に、未来はない!!」
闘也はいいながら突進し、剣を振った。
「奇麗事を!!!」
潤が言い返しながら、同様に剣を振り、再び二つの剣がつばぜり合いになる。
「殺された、だから仇を討つ。討たれた側は、仇を討つとまた殺す。そんなことの繰り返しでは、戦争は終わらない!!!」
闘也の叫びと共に、剣の間から火花が散った。弾いた直後、間髪いれずに、闘也はがら空きの潤の体へと剣を振り下ろした。
紅蓮の前に現れたのは、懐かしくも、因縁を感じざるを得ない相手、青水冷雅であった。
紅蓮の両親は、第一次超能力戦争時、北朝鮮での戦闘から帰ってきたときには、すでに無残な姿で息を引き取っていた。
家そのものに目立った傷がないことからも、殺されたことは明らかであった。
しかし、紅蓮はその犯人が冷雅であることを知らぬまま、第二次超能力戦争を戦い、その途中、冷雅唯一の肉親、彼の弟、青水河川を殺したのである。その復讐に燃える冷雅から、初めて自分の両親が彼に殺されたことを紅蓮は知った。
だが、彼は平常心を乱すことはなかった。ただひたすらに自分の力を信じ、求めるもののため、それを手にするために戦ってきた。そう、他でもない、自分自身のために。
紅蓮は世界の情勢を案じる気はない。政治そのものなど、論外であった。だが紅蓮は、自分が戦士であること。戦い続ける運命にあること。戦いこそが、自分の生きる道であり、生きがいであり、生きている証であることを自覚していた。
だから、どんな戦闘にも、ためらいはない。
「紅蓮!! 今日こそ、お前を!!」
冷雅が叫びながら太刀を振るう。紅蓮は飛び退き、その斬撃をかわす。
(俺は兵器じゃない。だが、戦士だ)
口の中で呟くように、紅蓮は思った。そして、両手に装備している金属製のクラッカーのような形状の爪を展開して言い放った。
「赤火紅蓮、戦闘を開始する!」
言い終えると同時に、展開した爪が縦横無尽に駆け巡り、冷雅へと向かっていく。爪型遠隔操作自律兵器、サイコ・クロウ。サイコ・クロウをはじめとする遠隔操作型の兵器は、それぞれが自律行動を可能とした超高性能の仕様となっている。そのため、個々が別々の動きを、その状況を即座に判断して動くことができる。また、使用者が遠隔操作によって、命令する形で動かすこともできる。しかし、第二次超能力戦争を戦いぬいた紅蓮でも、今ある十ほどのサイコ・クロウまでが、一度に動かせる最大数だ。最も、自動操作に切り替えれば、いくらか追加はできるが。
十のサイコ・クロウは、その爪の先から粒子を発射しながら冷雅へと突進する。紅蓮がサイコ・クロウを習得したばかりのころは、粒子は内蔵されておらず、ただ突進させることによる特攻兵器に近しかった。だが、中途より、粒子の能力を手に入れたことにより、粒子発射も可能となっていた。
「そんなもので!!」
冷雅はいうなり、その射線をかわし、三つのサイコ・クロウを、黒い球体で立て続けに直撃させる。だが、威力が十分でないためか、まだ健在であった。粒子は撃てる状態だが、突貫すれば、貫通する前に爆発し、消滅するのは目に見えていた。
「全方位っ!!」
紅蓮は呟き、サイコ・クロウをそれぞれ離れさせる。そして、立て続けに冷雅へと突進させる。時間差で、しかも十分に予測された場所へ。冷雅の心臓が来るよう、ピンポイントで。
「当たるか!!」
冷雅は自分の眼前に迫ったサイコ・クロウを太刀で両断しながら飛び退く。飛び退いた際に、冷雅の左足を、粒子ビームがかすめるのが見えた。
「はぁぁっっ!!」
しかし、冷雅が飛び退いたころには、紅蓮は新たな爪を生成して迫ることに成功していた。
冷雅の舌打ちが聞こえた。
乱州は、ジャスティスから放たれたビームを回避し、反撃の拳を叩きつける。ジャスティスは吹き飛ばされ、体勢を崩した。乱州は追撃するため、一気に接近し、右手を腕剣へと変形させ、それをジャスティスへと振り下ろした。
「くっ!」
ジャスティスの漏れたような声が聞こえる。ジャスティスは乱州の腕剣を何とか後退してかわしたが、反撃のビームを射掛ける前に、乱州は腕を伸ばし、ジャスティスに追撃する。
「すごいのは兵器だけか! ジャスティスとやら!!」
乱州は接近し、腕剣を叩きつける。ジャスティスはそれを光剣で受け止める。ジャスティスは乱州の腕を弾き飛ばすと、素早く銃に持ち替え、反撃のビームを放ってきた。乱州はそのビームをいとも容易くかわして見せた。だが、狙いは正確だ。予測射撃も申し分ない。
だが、こちらの反応速度の方が、明らかに勝っている。
ジャスティスが全ての砲塔を起動させ、こちらに全てのビーム兵器を放ってくる。乱州は正面から突っ込んだ。ビームへいきが乱州を貫く直前、乱州は粒子状となって、ジャスティスの視界から消えた。
「量子化!?」
乱州は完全に姿をくらまし、一気にジャスティスの背後を取った。乱州が腕剣を振り下ろすのを感じたのか、振り向きざまに、乱州の剣を受け止めた。
ジャスティスが剣を振りぬき、乱州の右腕を弾いた。
だが、まだ左腕は残っている。
乱州は左の腕剣を振るい、ジャスティスの光剣を柄から斬りおとす。あくまで、柄だけを。
「このぉぉっ!!」
ジャスティスがまだ使っていない右手の光剣を振るう。だが、その光剣は立て直した右腕で防ぐ。乱州の腕はクロスし、右腕は逆さの状態となった。防いでいる間に、乱州は左腕を元の位置に戻すように振った。ジャスティスの右手の光剣を薙ぎ払いながら。
「がら空きだぁぁっ!!」
乱州は叫びながら、ジャスティスとすれ違いざまに左腕を振るい、ジャスティスの左足を膝下から切断した。
「兵器で纏われているなんて、兵器と同じだ」
乱州は振り向きながら呟いた。
エクロは、クリエイターの相手をしていた。今や神翼世界では有名となったチーム・スレイヤーの隊員たちが、それぞれの武器を手に迫ってくる。世界中に名を馳せるだけのことはあり、こちらの攻撃も、狙いが甘ければかわし、逆に、向こうの狙いもよく洗練されている。
だが、こちらにはそれを上回る機動力と火力がある。
負けるはずはない。否、負けは許されない。
組織としても、自分自身のプライドとしても。
「吹き飛べぇっ!!」
エクロが腰だめに構えたバズーカパーツが火を噴き、太い粒子砲が一直線に発射される。その砲火は、チーム・スレイヤーの面々にはかすめもしなかったが、その後方のクリエイターの数人を一気に、文字通り吹き飛ばした。
「! 敵!?」
左目に装着されている小型モニターから、敵の接近を示す警告音が鳴り響く。
と同時に、飛び退いたエクロのいた場所を銃弾が駆け抜ける。エクロはその方向を見やった。三人で編成されており、そのうちの一人が、剣を片手に、こちらに突撃してくるのが見えた。しかし、さきほどの銃弾は、その後方にいるもののようだ。
ジャストが爪を突きたててこちらに、文字通り音速で迫ってくる。咄嗟に掲げた翼に、体当たりを食らう。
幸い、爪で切り裂かれることはなかったが、威力は凄まじく、秋人は吹っ飛ばされる。ジャストが肩に装備したブーメランを投擲し、それに続くように突進してくる。
「かわせるっ!!」
秋人は言いながら、ブーメランを回避する。遠距離攻撃を行っていては、ジャストの突進がブーメランを追い越して接近する。しかし、近距離でブーメランを弾く、もしくは破壊すれば、その時にできた隙に付け入って一気に畳み掛けてくる。
こうするしかない。
だが、それこそが敵の狙いでもあった。
「直角!? ぬぁっ!!」
真上に回避した秋人を、まるで獲物を追う肉食動物のように追う。九十度の角度変え。それによって、秋人を捕らえたジャストが、秋人の左腕を持っていった。
「戦いをやめればいいものを!」
ジャストが言いながら、追撃のビームを発射してくる。秋人はそのビームを翼で受け止め、急速に接近した。
「その気はないね!!!」
今度は、秋人が音速の域に達した。