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Xpoint-クロス・ポイント-  作者: 織間リオ
第三章【破壊者再び】
12/17

11、戦いの予兆

 ニアたち、ネオ・ブレイク軍は、攻め込んできた三人の青年達によって、苦戦を強いられていた。

 各個の能力はそこそこだが、その兵数に関しては、他に引けをとらないネオ・ブレイクが、こうまで追い込まれている。手に入れることは難しくなかったが、重要かつ第一拠点のこのハワイを侵略されれば、こちらの戦力は著しく失われる。この戦闘だけでも、すでに五十人を超える犠牲者を出している。ハワイ基地の兵力は、非戦闘員を含めても百人足らず。基地の運営はすでに難しいものである。

 数に対し、火力にものを言わせて戦いを挑む。少数精鋭という肩書きのゲリラ戦法。だが、これはゲリラなんて生易しいものではない。

 神翼世界のハワイ諸島に基地を作ったのは、エスパー正規軍の侵略を考慮したものであった。しかし、こちらにはこちらでまた別の脅威があった。これでは、どこに基地を作っても同じことではないか。

「くそがぁぁぁぁっ!!」

ニアは狂い叫びながらハンドガンを乱射する。が、放たれた弾丸は、ジャスティスの眼前でジャストに阻まれ、有効打撃はなかった。

 ジャストが飛び退くと同時に、ジャスティスの各砲座が一斉に火を噴く。


「ちっ!」

ジャスティスが放ったビームが、後方の多数の兵士を貫く。今のたった一発の攻撃だけで、すでに二十人以上は被害を被った。

「舐めたまねしやがってぇぇっ!!」

ニアはジャスティスに斬りかかる。ジャスティスは左手にグリップしている光剣で受け止める。二つの剣の間にスパークが生じる。そして、ジャスティスが転じた。右手に銃を構えたまま、こちらの顔面を殴りつけてきた。剣は離れ、体勢が崩れる。ジャスティスはこちらに体勢を立て直す余裕がなくすかのように、右肩の砲座からビームを発射する。体勢を完全に立て直す前に、ニアの右足はそのビームに飲み込まれる。反撃に転じようと左手の銃口をジャスティスに向ける。だが、その銃弾が放たれる前に、ジャスティスによって左腕を肘下から切断される。

「がぁっ・・・・・・!!」

ジャストが間髪入れずに蹴りをいれる。右足もろとも、右舷ブースターを持っていかれたため、姿勢制御がうまく利かない。それでも、どうにか海面ぎりぎりで体勢を立て直す。しかし、すでにニアには戦闘力は残されてはいなかった。海岸にたどり着くと、力の限りに右手を砂浜に撃ちつけ、絶叫した。

「くそぉぉぉぉっ!!!」


 神翼世界、ネオ・ブレイク軍ハワイ基地上空で行われた戦闘は、ジャスティスたち、ビクトリアの勝利で終わった。最終的に基地の残された戦闘員は二十人未満。基地というよりは施設のような状態になっていた。

 しかし、この戦闘の間に、ネオ・ブレイク軍は、神翼世界にて、新たにインドネシア、オーストラリア大陸を占領。超能世界においても、イギリス、西インド諸島を占領し、ネオ・ブレイクの力は両世界に知らしめられた。


 ネオ・ブレイク軍のハワイ基地が、ビクトリアによって壊滅状態に陥ったという報せは、すぐにロントにも伝わった。それと同時に、ネオ・ブレイク軍の各拠点が一斉に建ち始めたことも伝えられていた。

「なんでこんなこと・・・・・・」

何故人は、こうも自らの欲を第一に行動を起こすのだろうか?それが人間の本能だといってしまえば、それはそうなのだろうが、それでも、こんなことばかりを続けていて、意味があると、確証を持っていえるのだろうか。一つの組織だけではない。全ての陣営、全ての兵士達に、潤は問うてみたかった。

「潤」

自分を呼ぶ声と同時に、背中を軽く押される。奈々だ。

「奈々・・・・・・何?」

「サイコストが、インド洋上に新たに基地を建設するネオ・ブレイクへの進軍を始めたらしいの」

「それって・・・・・・」

潤の懸念に、奈々は答える。

「サイコストが、攻勢に出た」

「そんな・・・・・・!」

戦争が、一気に拡がり始めたのだ。

 この戦闘は、サイコストにとっては、戦争を終わらせるため、根源となりえる者を潰すという名目で行うのだろうが、名目は、それこそ名目でしかない。戦争を終わらせるためだと、戦って、戦って、また戦って。それでは、結局は戦火が拡がるだけなのだ。戦いは戦いを生む。戦いを終わらせるためにも、戦うしかないと、戦い続けるサイコストの考えが、よく理解できない。

 もちろん、戦わずにいれば滅ぼされるだけだと分かっている。だからこそ、守るために剣を取り、銃を握る。だが、さばいた剣が、引いた引き金が、守られる命を奪っていくのだ。

 戦いとは、なんと矛盾したものなのだろうか。

「・・・・・・潤?」

「え、ああ、ごめん。何?」

「だから、そのためのブリーフィング。皆集まって来てる」

「うん。分かった」

その一言を言い終えた潤は、奈々と共にブリーフィングルームへと向かった。


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