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Xpoint-クロス・ポイント-  作者: 織間リオ
第三章【破壊者再び】
11/17

10、緊張の中

 サイコストたちの住む世界、超能世界は、すでに夕暮れの時を向かえていた。潤はこの世界に一人で入り込んだ。今回の任務は戦闘そのものではないが、結果的には、人を殺す任務である。標的――ターゲットは、緩やかに流れる川の土手で、一人静かに座っていた。周囲に人影はなかった。

 潤は、腰のハンドガンを手に取った。両手で構えながら、対象にゆっくりと近づいていく。おそらく、足音に気づいたのか、今回のターゲットとなった魂波闘也はこちらを振り向いた。

 一発の銃声が、僅かな川の音しか聞こえぬ辺り一面に鳴り響いた。


 ジャスティス、ジャスト、エクロの三人は、ビクトリア本部より入った情報を元に、神翼世界ハワイ諸島上空へと向かっていた。

 今回三人に与えられた任務は、ハワイ諸島を占拠したネオ・ブレイク軍の無力化である。本部からの情報によれば、このハワイ諸島を拠点にして、各地に軍隊を派遣、その勢力を拡大させていくものと思われている。

『ハワイ領空に到達。駐在中のネオ・ブレイク空軍の追撃部隊を確認』

エクロが状況を確認し、ジャスティスとジャストに伝えてくる。

『よし、行くぞ』

ジャストがコアフライヤーより飛び出し、各パーツとのジョイントを始める。ジャスティスもすぐに飛び出し、各パーツを取り付けていく。

 エクロもそれに続いて、背中に暗緑色の砲塔を背負う。ジャストは紅き風のようなダッシュパーツ、そしてジャスティスは蒼き翼、ウイングパーツ。

「行こう!」

ジャスティスの一言と共に、全砲塔を一気に開く。前方に展開しつつあるネオ・ブレイク軍へ、ビームが襲い掛かり、瞬く間に十数人を戦闘から離脱させた。エクロがそれにならうように、背中の砲塔で薙ぎ払う。

「突貫する!援護を頼む!」

ジャストが言いながら先陣を切って進んでいく。ジャスティスもそれに続く。両手それぞれにグリップしたビームガンで、ジャストの進路を阻むネオ・ブレイク軍の兵士を撃ちぬいていく。

 三つの人影が地上よりこちらへと向かってくる。明らかに他の兵よりも速い。脚部に取り付けられたブースターの出力を改良してあるのであろう。

「速い!」

そう口にしたころには、すでにその三つの人影はジャスティスの周囲を取り囲み、そのうちの一人が斬りかかってきた。

「くっ!」

抜刀と同時に振り下ろされた剣を受け止める。残り二人から放たれた銃弾を、シールドで受け止める。

「その力、見せてみろよっ!!」

斬りかかってきた少年が威勢よく啖呵を切る。少年はこちらの剣をいなすと同時に、左手にグリップしているハンドガンのトリガーを絞る。ジャスティスは間一髪のところでシールドを正面に構えて攻撃を耐える。そのシールドをすぐに先ほどまでの銃弾を防ぐために向け、距離を取りながらビームガンを撃ちだす。

「逃げんじゃねぇっ!!」

「突出しすぎるな、ニア!」

銃弾を放っていたうちの一人が、少年に注意を促す。しかし、ニアと呼ばれた少年は、それが聞こえていないのか、あるいは気にかけていないのか。

「なんて傲慢な・・・・・・」

思わず口に出してしまっていたが、それすらも聞こえていないらしい。

 ジャスティスは再び振り下ろされた剣を、またしても受け止めた。


 銃弾は、対岸の地面を抉った。

 振り向きざまで状況が読めていないはずの闘也は、軽々と体を沈み込ませ、銃弾は先ほどまで闘也の頭があった場所を通り過ぎたのである。

 闘也が銃を向ける。潤はすぐにリロードし、闘也に向かって銃を向ける。

「銃を捨てろ。僕の任務は、この引き金を引くことだ」

潤の目には闘也一人しか入っていなかった。闘也が銃口を外し、潤の足元に投げてくる。潤の気がそちらにそれた一瞬、闘也が接近してきた。潤が闘也の接近に気づいたのは、その手から銃を払われてからだった。完全に投げられた銃に意識を逸らされた。闘也は間髪いれずに潤の腹部に蹴りを入れる。潤は吹き飛ばされるが、なんとか持ちこたえた。

 潤の持っていた銃と、闘也が作り出した銃の両方を、闘也は川に投げ捨てた。ゆっくりとこちらに振り向くと、皮肉気味に言った。

「捨てたぞ。目的はなんだ?」

潤は歯噛みした。今、持ちえる武装はなかった。隠密行動であるが故、下手に戦闘に持ち込むことはできない。

「俺を殺しに来たんだろう?」

「・・・・・・」

 自問自答ではないか。確認する必要もなかろうに、何故疑問符などをつけたのだろう。それ以外の可能性を考えられるとでも思っていたのだろうか。

「お前、父親はいるか?」

「何を・・・・・・」

唐突に突きつけられた質問の意味を、潤は理解しかねた。しばらく押し黙ったのち、潤は口を開いた。

「僕の父さんは、最低の父親だよ。僕が小さいころ、別の意志、人格を植え付け、複合人間にした。僕は最初はその人格を掴みかねていた。自分のことしか考えていないようなやつだった。自分ではない。自分ではないと言い聞かせ、突き放したつもりだった。でも、僕が父さんの攻撃を食らう直前に、人格は、肉体を生成して、僕の盾になって、死んだ。・・・・・・結局、彼は僕のことも考えてくれていた。自分のことしか考えていなかったのは、僕の方だった」

「親父が憎いか?」

「・・・・・・彼を失ったことで、僕は複合人間ではなくなり、本来の力が発揮された」

「紅い翼のことか」

潤は、ゆっくりと頷く。そして、続けて言う。

「その力で、僕は父さんを殺した・・・・・・はずだった。けど、父さんは生きていた。手加減はなかったし、殺したときも、ある種の達成感しかなかった。喪失感は、殺してからいくら経っても、沸いてはこなかった」

「俺の父さんは、俺が殺した」

「えっ!?」

またも唐突な言葉に潤は当惑した。だが、闘也はそれに構わず話し始めた。

「第一次超能力戦争の時だ。父さんは、戦争を起こした張本人だった。俺は憎かった。何故起こす必要があったのか。その答えが知りたかった。だが、その答えを聞かぬまま、俺は父さんを斬った」

妙な感覚が、闘也から伝わってきた。潤は少し俯いたが、すぐに顔を上げた。

「父さんが死んだ・・・・・・いや、殺したとき、俺は泣いたよ。ああ、殺してしまったんだな、ってな。喪失感が体を支配していた」

「だけどそれは、戦争を終わらせるために必要な犠牲と、割り切れなかったの?」

「お前は違っただろう。戦争を終わらせるために、自分の父親まで殺した。お前の言うとおりだ。お前、自分のことしか考えられないからな。この前の戦闘も、お前、仲間を置いて、ジャスティスとやらに向かっただろう!」

潤ははっとして、先日の戦闘を思い出した。確かにそうだった。自分は仲間のことを気にもとめず、自分のことしか考えていなかった。

「戦える。だがそれは、後ろに、志を同じくするやつらがいるからだろう。戦うことは、仲間を守ることと、守ってもらうことを同時に行っているんだ。・・・・・・それだけだ。俺が言いたいのは」

それを言い終えると、闘也は潤に背を向け、歩き出した。

 潤は、その背中を見続けることしかできなかった。


 ニアと呼ばれた少年の剣を受け止めているジャスティスに、横槍を入れるようにもう一人の少年が側面から襲い掛かってくる。ジャスティスはそれを後方に下がって回避すると同時に、ニアの怒鳴り声が聞こえてくる。

「邪魔すんじゃねぇ!ギル! こいつは俺の獲物だっ!」

「お前の獲物だと、誰が決めた」

言い返しながらも、ギルと呼ばれた少年は抜け目なくこちらを狙ってくる。ジャスティスは放たれる攻撃の全てを華麗なまでに回避すると、すぐさま次の攻撃にと転じる。不意に猛一人の少年が下方から銃弾を放ってくる。ニアが再び怒鳴る。

「ニルまでっ!! くそがっ・・・・・・」

「目標の殲滅は、俺達に与えられた任務だ。俺はそれを遂行するだけだ」

「おめーの台詞は聞き飽きた!!」

「勝手に言っていろ。俺は任務を・・・・・・」

言い終える前に、すでにジャスティスはニルへの攻撃を開始していた。放たれたビームが、ニルとニアの衣服をかすめ、焼き払う。

「おらぁぁぁっ!!」

ニアが剣を再び振り下ろす。ジャスティスはそれが振り下ろされる寸前で、ビームガンを撃ち出し、剣を使い物にできなくする。ジャスティスはすぐに次の行動に移行する。

 少しばかり後方に下がり、全ての火器を起動させる。全砲塔から放たれたビームが、ニアたちへと襲い掛かる。しかし、さすがに予備動作が大きいせいもあり、熱線は容易く回避される。ジャスティスは距離を縮められないよう、肩のバズーカを放ちながら後退する。だが、それでもすぐに三人は接近し、攻撃を仕掛けてくる。口喧嘩は激しいが、それに比例してか、皮肉にも連携が凄まじい。

「くっ・・・・・・」

「いただきぃっ!」

ニアが突出してくる。しかし、それはジャスティスにとっては好機であった。一瞬の隙をつき、ジャスティスはニアの腹部を十字に斬りつけ、その傷に追い討ちをかけるように蹴りを入れる。ニアの方はたまらなかったらしい。体勢をあっけなく崩れ、戦線を離脱していく。ジャスティスは背後に接近していたギルに、至近距離でビームガンを当てる。その銃口は、心臓からは大きくずれ、右足先を狙い違わず貫いた。

「ジャスティス!下だ!」

ジャストが警告してくるのに一瞬遅れて、下方よりニルが襲い掛かってくる。振られた剣を回避し、ビームガンを放ちながら下がる。ニルはその射線を見切ってこちらに接近し、剣を横薙ぎに振るう。狙い違わぬ、正確な斬撃であったが、ジャスティスに当てることはできなかった。

 ジャスティスは返す刀を脚部に滑り込ませる。間髪入れぬ攻撃を、ニルはかわして見せた。それによってできた一瞬の隙をつかれ、無防備な右手からビームソードが弾かれる。振動によるしびれが右手を襲う。ニルはすぐさま左手にグリップしたハンドガンから、銃弾を撃ちだす。眼前に掲げたシールドが、銃弾を弾く。ニルが握るハンドガンからの硝煙が立ち消える前に、ジャスティスはビームガンで銃を焼き払った。

「もらった」

「・・・・・・っ! しまった!」

背後に回りこんでいたニルが右手に握り締めた剣を振るう。回避できる距離ではなかった。だが、受けようにも盾は背中にはついていない。

 死を覚悟した瞬間、ニルは突き飛ばされる。むろんジャスティスにではなかった。ニルが体勢を立て直すとほぼ時を同じくして、ジャストが眼前に現れる。ジャストは、ジャスティスに背を向けたまま言った。

「大丈夫か!?」

「ありがとう。僕は大丈夫」

感謝の意を伝えたジャスティスの前には、戦線復帰したニアとギルがいた。ニアは剣を握り締め、ギルは銃口を向けている。

「戦いのない世界。その世界に僕達も・・・・・・」

ジャスティスは呟く。ジャストがその意図を汲み取ったのか、ジャスティスの言葉に続けた。

「お前達も必要ない!」

後方からの援護を受けながら、ニアとニルが接近してくる。ジャスティスとジャストは上空に飛び上がって銃弾を回避し、襲い掛かってくるニアとニルにビームガンを浴びせる。

「おらおらぁっ!! 避けてみせろよっ!!」

ニアが叫びながらこちらに接近してくる。銃弾の雨が止むことはない。しかも、その銃弾は、ニアとニルをかすめかねない位置を通り過ぎ、こちらへと向かってくる。軍事同盟を組んだだけに、その軍事力は計り知れない。

「くそっ、数が多いっ!!」

「エクロは!?」

ジャストがそれに答える間もなく、回避行動に移る。ジャスティスも同様に回避し、ビームガンでブレイカーとカスタムを貫く。

「そらぁぁっ!!」

ジャスティスにニアが切りかかってくる。ビームソードで振り下ろされた剣を受け止め、それを弾き、脚部のレッグレーザーを発射する。間一髪でニアはかわすが、それでも右足をかすめていた。

「噂をすればっ!」

ジャストが呟く。下方より援護射撃を行っていた兵士達が、極太のビームに巻き込まれて消散する。エクロのビーム砲によるものである。

「エクロ、残存兵力は!?」

『46です!』

それを聞いたジャスティスとジャストは同時に「了解」と答えを返す。

「いくぞ、残りを一気に吹き飛ばす!」

「うん」

ジャスティスは、各砲塔のチャージを開始した。


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