僕らの手の上に
だぁーいすき。
愛情なんかじゃ、足りない。
もっともっと強い繋がりで。
血で繋がっている僕らを誰も邪魔はできないよ――。
くすくすくす……。
そんな僕らを邪魔した愚者はだぁれ?
――さあ、僕らと踊ろうか。
僕はいつもどおりに過ごしていた。
授業中は静かに教室でぼーっとしていた。
つまらない。
そう小さくつぶやいた瞬間、光りだす携帯。メールだ。
送り主なんて確認するまでもない。僕の携帯にメールや電話をしてくるのはたった一人だ。
内容を確認したら、思わず笑ってしまった。
『つまんないから、次一緒にサボろ』
時計を確認すると、授業終了まであと五分。たまたま授業が早く終わったのか、担当の教師はいなくなっていた。
僕はメールの相手がしでかしそうなことを予想して、メールを打った。
すると、拗ねてしまったのか、すぐに返ってくるはずの返信がなかった。
可愛いなあ。
そうにやけながら、僕は歩いていた。
ただひたすら、彼の教室を目指して。
「迎えに来たよ、祐樹」
君は驚いて僕に駆け寄ってきた。
「会いたくないって思ってるのかと思った……」
「そんなわけないじゃん」
その言葉に君はだらしなく笑う。
僕は『最後まで授業はうけてね』とメールを送ったのだ。祐樹は先生の有無に関わらず、すぐ僕に会いたいが為に授業をサボって僕を迎えに来るから。
祐樹は僕が迎えに来るとは思わず、ただただすぐに会えない事実に拗ねてしまった。僕が自分と同じ気持ちではないのかと。
僕だって、迎えに行きたかったのだ。臆病者の僕は、先生がいる前で堂々とサボることができなかっただけで。
「優季」
「ん?」
「早く行こう」
どこかイライラしている祐樹を感じて、僕はようやく周りに目を向けた。
好奇の目。
それがいたるところにあった。
クラスの人気者の祐樹に双子がいるなんて思いもしなかったんだろう。僕はクラスで友達を作らず、空気のように過ごしているから。他クラスの人が僕を知っているはずがない。
「あんな奴ら、優季の視界にいれる必要ない」
祐樹は僕の腕を掴むと無理矢理方向転換させた。教室から見えるのは、僕の背中だけ。
そのまま祐樹は走りに近いスピードで歩き始めた。
「オトモダチ、じゃないの?」
「まさか。ただの道具だよ」
煩わしいけど、時々使えるんだ。
そう言って、歪んだ笑みを浮かべる祐樹は綺麗だった。
くすくすくす。
二人の笑い声が共鳴する。
同じ顔、同じ呼び名。
お互いを認識するのはお互いだけでいい。
邪魔をする奴は許さないよ――。