タイムマシン<800文字>
「お、安定したな」
俺は隣でディスプレイを眺めながら、電子の濁流でバタフライをしながら人間には到底理解できない音楽を聞くネジの一本外れたアンドロイドに言ってみた。
「問題はありません。私は人間よりも優れていますので」
だから信用できない。
この機械は人間に居るナルシストに酷く似ていて、その言動が酷く鼻につく。
滑稽でいて人の心を容赦無く抉り取る。
「はいはい。俺は嬉しいよ。お前みたいな大変優秀な機械を作れてね」
「マスター。私は既に人間の領域を超えて新たな知的生命体へと昇華しています」
「ん。あぁ、そうですね。それより、やけに波長パターンが穏やかだな」
適当に、相槌を打ちつつも、気になったところを指摘するとアンドロイドは相変わらず、人間には良く理解できない音楽を聞きながら俺の指摘への返答となるデータを俺の脳裏に転送させた。
「相変わらずぶっ飛んでんな。これは」
「人間の脳に合わせています。我慢してください。私に言わせればマスターはそろそろ増設した方がよろしいかと」
「馬鹿。んな、頭の重くなるような事を俺がすると思うか?」
「増設した方が知識を貯め込み、無駄を無くせますが?」
「何年居る?」
「何の話ですか」
「俺に作られて何年だ」
「初期製造は今から20年前。現在の私自身は半年前ですが。何か」
「記憶はバックアップから抜き出してんだろう。俺と20年付き添って何も判っていない時点でお前はまだまだ機械だ」
「意味が判りません」
「だから、お前はまだ機械なの」
「何を言っているのですか」
「ったくうぜぇな」
「マスターが主に、現在の状況を作り成した原因なのですが」
「おい、それより、出力も安定したぞ。取り掛かる」
「マスター」
「ああ?」
「帰還を果たしたのなら、何故私が未だに機械だと根拠づけるものを提示してください」
「良いぜ。お前が未来に存在していたらな」
そういって、俺は過去へと飛び込んだ。
腐った世の中を作った自分自身を殺すために