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くすぐり魔女の館  作者: nice tickle


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第2話 くすぐり被害者ファイル

エレナはあのスピード違反の男の廃人化事件の翌日、警察署の古い資料室にこもっていた。エレナはデスクに山積みのファイルを広げ、あの屋敷に関する、過去の被害者記録を一つずつめくり始めた。彼女の頭の中には昨夜の笑い声が残響のようにこだましている。安全な警察署の中にいるはずなのに、ファイルを開く手は微かに震えていた。きっと、彼女がくすぐりにトラウマを抱いていることと無関係ではないだろう。あの姉たちからのくすぐり地獄の記憶が、ふとした瞬間に蘇る。ベッドの狭い空間で、左右から指が這い寄る感覚…いくら泣いても謝っても、くすぐり続けられる恐怖…今も体が反応しそうになるのを、彼女は必死に抑え込んだ。


最初のファイルは、3年前の事件だった。被害者: ジャン・マルティン、32歳、フランス人観光客。発見場所: 屋敷の庭、朝の散策中に倒れていた。状態: 目は虚ろで、口角が引きつった笑みを浮かべ、絶え間なく「へへへ…あはは…」と低く笑い続ける。医師の診断: 極度の精神的ショックによる解離性障害。回復の見込みなし。身体の痕跡: 目立った外傷なし。ただし、脇腹、首筋、足裏に柔らかいもので繰り返し撫でられたような微かな赤い痕。ジャンは屋敷に入った後、奇妙な笑い声を上げて出てきたと目撃者が証言していた。エレナは写真を凝視した。ジャンの顔は歪み、汗で濡れたシャツが体に張り付き、指先が震えているようだ。「この痕…ピエールと同じだわ」。


次に、2年前のファイル。被害者: マリア・ゴンザレス、29歳、スペインからのバックパッカー。発見場所: 屋敷の玄関前、夜間に侵入したらしい。状態: 笑いが止まらず、涙を流しながら地面に転がっていた。病院では「笑いの発作が呼吸を阻害し、酸欠状態」と記録。彼女は今も施設で笑い続け、言葉を発しない。痕跡: お腹と腰回りに円状の赤み、足指の間に小さな擦過傷。目撃情報によると、マリアは屋敷から出てきたとき、必死に叫んでいた。「こちょこちょ…やめて!」と。しかし、黒いドレスを着た魔女のような影が現れ、怯えた目撃者は逃げ出した。後ろからは、女性の狂ったような笑い声がいつまでも続いていたという。エレナの眉が寄った。「昨日窓から見えた人影も女性だった。偶然じゃない」。


さらにページをめくると、1年前の複数被害者ファイル。グループで屋敷を探検した4人組—全員20代後半のフランス人の若者たち。リーダー格のポール・デュボワ、27歳、他3名。発見場所: 屋敷の周辺林、全員が散らばって倒れていた。状態: 全員が笑い狂い、「くすぐったい!」と叫んでいた。ポールは特に重症で、笑いの合間に「羽根…オイル…」と呟いていた。痕跡: 首、耳、脇に羽根状の細い線、皮膚がオイルのような光沢を帯び、敏感に反応。医師は「神経過敏症の誘発」と推測したが、原因不明。エレナはレポートを読み進め、被害者たちの共通点をメモした。皆、屋敷に入った後に症状を発現。笑いが強制的に続き、精神が崩壊したようだ。身体の痕は敏感な部位に集中している…脇の下、脇腹、足裏、首筋、お腹。まるで意図的に狙われたようだ。


ファイルの山を片付けながら、エレナはため息をついた。


「これだけ被害者がいるのに、なぜ本格捜査しないの?」


上司の言葉を思い出す。「呪いの屋敷さ。関わるとろくなことないよ」。しかし、エレナは諦めなかった。次に、地元の博物館へ向かう。魔女の遺物が展示されていると聞いたのだ。博物館は古い石造りの建物で、入口に「ブルターニュ魔女伝説展」の看板が掛かっていた。入場料を払い、エレナは魔女関連のコーナーへ直行した。ガラスケースの中に、魔女の肖像画が飾られている。魔女の名はエヴェリン・ド・モントール、17世紀の人物。黒いドレスを纏っているが、目鼻立ちの整った美人だ。妖艶な笑みを浮かべた肖像…その両手は襲いかかるように広げられ、今にもくすぐってきそうだ。エレナは身震いする。


何か証拠につながる品はないか。まず目に入ったのは、魔女の日記だ。革装丁の古い本で、原文の一部が翻訳付きで公開されていた。エレナはガラス越しにページを覗き込んだ。日記の内容はとても生々しいものだ。


1月12日。昨日の夜、村娘を捕まえてきた。至って簡単だ。人気のない裏路地で背後から猿轡を噛ませる。これで、どれだけくすぐっても、声は出せなくなる。村娘は必死に抵抗するが、私には特別なくすぐり道具たちがある。少しコチョコチョと弄んでやるだけで、村娘は体をビクンビクンとのけぞらせ、地面に崩れ落ちてしまう。今日の村娘はおとなしかった。「屋敷まで来てくれるかい?抵抗すれば、今ここで廃人になるまでくすぐってやろう。」と言ったところ、必死に頷き、私についてきた。おかげで、屋敷まで運ぶ手間が省けた。もし断っても、敏感な村娘なら簡単なことだ。馬乗りになってくすぐってやれば、ものの数分で泡を吹いて気絶してしまう。


日記にはくすぐり手法の詳細や、その経過も記されていた。魔女は村人を実験台に、「くすぐり」を研究していたらしい。


3月25日。今日は村の若い女騎士をくすぐり実験にかける。愚かなことに、この私を討伐しようとしたのだ。夜に屋敷に忍び込んだようだが、くすぐりアイアンメイデンの罠にかかって爆笑し、精神崩壊しかかっていた。実験のためにしばらく休ませていたが、昨日は生意気なことを言えるほど回復していたので、大丈夫だろう。

今日使うのは、くすぐり羽根だ。孔雀の羽を魔法の薬で加工し、表面に小さな凹凸をつけてある。サッと撫でられるだけでも、敏感な村人なら笑わせられるだろう。まずは、足裏、耳元、首筋をサワサワと撫でていく。予想外に反応がいい。普段鎧を着ていて、直接触られるのに慣れていないのだろうか。くすぐりから逃れようとするたび、鉄の鎖をガチャガチャいわせながら、必死に身をよじる。

3月26日。昨日の続き。今度は脇腹を中心に、くすぐり羽根でくすぐっていく。どうも、脇腹は弱点らしい。これまでの威勢はどこへやら。「あははっはははは!脇腹はダメえ!いひひひ!そこ弱いの!」なんて言っている。羽根の枚数を増やすと、よほどくすぐったかったのか、気絶してしまった。

3月27日。昨日の続き。昼頃に女騎士を精神崩壊させることに成功した。羽根でくすぐった場所…足裏、耳元、首筋、脇腹には、わずかな赤い痕が残った。


5月6日。くすぐりローションの調合に成功した。森の薬草から抽出した成分を使用し、村人たちの肌を敏感にできる。今日の実験台は、村の若い娘の姉妹だ。2人に、「お互いにローションを使ってくすぐりあい、負けた方はくすぐりの刑で精神崩壊させてやる」、と告げる。薄めたローションを二人の牢屋に与えて様子を見る。最初は遠慮していたが、「1時間以内に勝負をつけないと、2人ともくすぐり処刑してやる」と言い、ちょっとくすぐってやると、怖くなったのだろうか。妹が先に、姉をくすぐり始めた。姉妹だから、お互いの弱点もわかっているのだろう。姉は弱点の脇の下を集中攻撃され、大爆笑する。姉がたっぷりローションをつけて反撃すると、妹もお腹がよじれるほど爆笑してしまう。最後は、妹がローションの瓶を掴むと、姉に向かって中身をかけた。全身ローションまみれになった姉は、それでも反撃しようとしたが、ローションまみれになった足の裏がくすぐったいのだろうか。足を抱えて爆笑してしまう。その隙を突かれ、妹から、馬乗りくすぐりの集中攻撃を受けて、気絶してしまう。全身ローションまみれだったが、姉の脇の下は集中攻撃を受けたせいで、わずかに赤い跡が残っている。

5月7日。昨日のつづき。朝は、姉を精神崩壊するまでくすぐった。昼くらいまでかかっただろうか。次に、妹の方をくすぐった。妹は、まさか自分がくすぐられるとは思っていなかったのだろう。牢屋の中でぐっすり眠っていた。イタズラしたい気分だったので、ベッドに馬乗りになってくすぐりで起こしてやると、体を必死にジタバタさせて大爆笑する。くすぐりローションを使うと、30分くらいで精神崩壊してしまった。効果は抜群だ。ローションによる感度増幅は10倍ほどだろうか。これでもっとたくさんの村人たちの笑いを楽しめるだろう。


日記を読んだエレナの心臓が早鐘のように鳴った。「わずかな赤い跡…これ…被害者たちの症状と同じ」。

博物館の学芸員、老婦人のマダム・ルノワールに話を聞いてみる。


「魔女は実在の人物よ。彼女は科学者でもあったわ。くすぐりを武器に、村を恐怖に陥れた。」


エレナは質問した。


「これらの手法が今も使われているとしたら?」


マダムは目を細めた。


「まさか…でも、最近のあの屋敷の事件、似てるわね。呪いじゃなく、誰かが真似してるのかも」


エレナは博物館を出て、車の中でファイルを並べた。魔女の手法と被害者の類似性。彼女の疑いは確信に変わった。


「犯人は魔女のノウハウを使っている。女性たちの声…末裔か崇拝者なのかしら」

「負けないわ。私が真相を暴いてみせる」


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